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反対農家への放火事件に発展
宮崎の税金ムダづかい事業

週刊ダイヤモンド編集部
2009年5月21日
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 宮崎県で今、「どげんかせんといかん」重大事が起きている。本誌が5月2日・9日合併号で取り上げた「尾鈴地区土地改良事業」をめぐり、放火事件が発生した。

 5月6日未明、宮崎県川南町の農業、今井伸二さん方の倉庫と空き家の2ヵ所から出火し、全焼した。今井さんは川南町の町議で、計画当初から異を唱えている。放火の数日前には「邪魔するな」と書かれた脅迫状が届き、警察に相談していた。放火の際には事業に関する書類も盗まれた。

 尾鈴地区土地改良事業は、川南、都農、高鍋の三町の畑地約1580ヘクタール(約1600戸)に農業用水を引くもので、国(農林水産省)がダムや幹線水路、宮崎県が支線水路などを整備する。総事業費は約390億円に上る。

 土地改良は農家の申請によって始められる事業で、対象区域農家の3分の2以上の同意が必要だ。また、事業としては一体ながら国や県などの事業主体ごとに同意を得ねばならない。尾鈴地区では国の事業に対しては8割以上の同意となり、1996年に事業着手。「切原ダム」建設などが順調に進み、2011年度に完了する。

 一方、県の事業は農家の同意が得られず、膠着状態に陥っている。国の事業に対しては、「判をつかないと補助金がもらえない」「これは仮同意、水がいらないならば、県の事業に同意しなければよい」といった説明を受け、ひとまず同意したものの、県の事業については反対の意思を明確に示す農家が増えたのだ。温暖多雨で、わき水やため池が点在する地域である。畑作技術の進歩も加わって水はもともと足りており、新たな水を確保する必要はないのが実情だからだ。

 県の事業は区域内を10地区に分け、同意を得られたところから順次、事業着手となったが、現時点で一区域のみ。ダムの完成を目前にしながら、水の受け皿が見つからない。窮余の策としてひねり出されたのが、「開閉栓方式」だ。農家が給水栓を開栓しない限り、設置費や負担金は不要。そのぶんを税金で肩代わりするから、同意だけはしてくれと必死の説得工作を続けている。

 はたしてこれが農家のための公共事業なのか。旧来の利権追求型公共事業そのまんまではないか。こうしたものを「どげんかする」のも県知事の公約だったはずだが。


(『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 相川俊英)

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