韓国で新政権が発足して3ヵ月。米国産牛肉の輸入再開問題をきっかけに市民の抗議行動が起こり、全閣僚が辞意を表明する事態にまで発展した。原油高にインフレ、経常収支の赤字拡大に政局不安も加わり、韓国経済は“通貨危機”以来の危機に直面している。在ソウルジャーナリストが現状と行方を大胆に分析した。

 今年2月に発足した李明博(イミョンバク)政権が暗礁に乗り上げている。

 そもそもの発端は、後述する米国産牛肉の輸入再開に市民が猛反発したことだが、その抗議行動は1ヵ月以上も続いている。当初は「牛肉輸入反対」「対米再交渉」だったスローガンが、日を追うごとに「李明博政権は退陣せよ」「大統領を弾劾せよ」とエスカレート。大統領の支持率も20%を割り込んだ。6月10日には、韓昇洙(ハンスンス)首相ら、全閣僚16人が辞意を表明する事態にまでなった。

 それでも混乱は収まらない。6月13日には、貨物連帯労組がコンテナなどの運送料30%値上げを要求してストを決行し、物流をまひさせた。このストで、1日にして6億ドルの輸出がストップした。ダンプカーなどの建設機械労組も16日からストに突入。あらゆる労働組合が夏季闘争と李政権の退陣要求の準備を始めている。

 韓国経済にも暗雲が立ち込めている。原油価格の急騰と食料や原材料など輸入品の値上がり、さらには通貨安、マネーサプライの増大と相まってインフレに火がついた。4月の消費者物価は前年同月比4.1%、5月は同4.9%のプラスに急騰した。消費者物価指数も109.7、ここ10年で最悪の数字だ。

 輸入物価は、ウォン安も手伝って激しい勢いで上昇。実際、5月の原材料輸入価格は、前年同月比83%増となっている。うち、38%はウォン安によるものだ。

 政治混乱による投資先送りなどもあって、市中のカネがだぶつき、4月のM2(広義の通貨量)は前年同月比14.9%増えた。