総予測2025#28

2025年版のQS世界大学ランキングで首位に輝いた名門の米マサチューセッツ工科大学(MIT)で、日本プログラム創設所長や政治学部長などを務め、米国の日本研究の第一人者として知られるのがリチャード・サミュエルズ教授だ。特集『総予測2025』の本稿では、トランプ次期米政権下で迎える25年以降の日米安全保障の先行きや、台湾有事を巡る米国の対応、日本の「ファイブアイズ」(米英など5カ国による機密情報共有の枠組み)加盟の可能性などに関し、率直な見解を明かしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

石破首相提唱「アジア版NATO」を巡る
名門MITのベテラン教授の見解は?

――2025年は日米の新安保条約締結から65年の節目となります。日本研究の第一人者として、トランプ次期米政権に移行後の日米安保の行方をどう見ますか。

 日米関係がいきなり、非友好的になるとは考えていません。恐らく、互いに「多少ヘッジを利かせた」程度の関係性となるのが、現実的な案配ではないでしょうか。両国間では「アジア地域の安定」という基本的な利害が一致しているからです。

 戦後の歴史を振り返ると、過去に日米の利害が乖離したことは何度もありましたが、次第に回帰するという流れがありました。

リチャード・サミュエルズRichard J. Samuels/1951年生まれ。81年米マサチューセッツ工科大学(MIT)日本プログラム創設所長、92年MIT政治学部学部長に。MIT国際研究センター前所長。専門は日本の政治、安全保障。

 1970年代の第1次オイルショック後の日本のパレスチナ支援や、前世紀末の対イラン関係、80~90年代の日米摩擦など、両国の利害が擦れ違い、関係が困難な時期にあっても、定期的に首脳会談を開き、やがて友好の花を咲かせてきたのです。

 日本から見れば、今や米国は衰退に向かう可能性のある超大国であり、中国の台頭を考えると、近隣の国々とも関係を強化するのは自然なことです。とはいえ、日米の間に亀裂が入るというシナリオは、近い将来には起こり得ないと考えています。

――石破茂首相が提唱した「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設の構想をどう考えますか。日米地位協定の見直しと併せ、同首相の考えには内外から冷ややかな声が聞かれます。

次ページでは、日本の政治・安保を知り尽くしたサミュエルズ教授に、石破首相提唱の「アジア版NATO」や台湾有事を巡る米国の対応、日米の経済安保協力や日本の「ファイブアイズ」(米英など5カ国による機密情報共有の枠組み)加盟の可能性などに関し、率直な見解を明かしてもらった。