握手をするビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

ビジネスでもプライベートでも人間関係の悩みは尽きない。しかし、数多くの企業でマネージャーを経験し、人と関わってきた作家のリチャード・テンプラー氏によると「人を動かすルール」を心がけると、人間関係の悩みが軽減するという。“できる人”は、どのように他人とのトラブルを対処し、人を動かしているのか。その方法について解説する。※本稿は、リチャード・テンプラー著・桜田直美訳『できる人の最強ルール101 The Rules of Everything』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集しお送りする。

説得で他人の意見を変えさせる
そんな希望は持たないほうがいい

<人を動かすルール>
説得で意見を変えることはできない

 最近、おもしろい調査の記事を読んだ。ある政治的な問題について、対立する意見を持つ人を集めてふたつのグループに分ける。そしてそれぞれに、その問題に関する客観的な調査データを渡す。するとどちらのグループも、自分の意見を裏づけるデータだけを信じたという。

 人が何を信じるかは、その人の世界観によって決まる。その世界観は、育った環境、過去の経験、友達の意見、自分が自分をどう見ているか、といったことで決まる。

 政治問題で激論になったときに、相手が自分の間違いを認めたことが今までにあるだろうか。「たしかにあなたの言う通りだ。私は意見を変えるよ」という言葉を、最後に聞いたのはいつだろう?そんな言葉を聞ける可能性は、ほぼないと言って間違いない。

 私たちは、まず直感で何を信じるか決める。それから自分の信念を裏づける証拠を探す。ただし、本人はこうした心の動きを自覚していない。自分の意見は客観的に正しく、相手の意見は客観的に間違っていると思い込んでいる。

 政治と宗教の話はしないほうがいいと昔から言われているが、それにはもっともな理由があるということだ。言葉、客観的事実、データといったものに、人の意見を変える力はない。たいていの場合、こちらが何をしても相手の意見は変わらない。

 もちろん、人は絶対に意見を変えないという意味ではない。ただ人に言われて変わることはないというだけだ。変わるなら、自分の経験から変わる必要がある。

 あなた自身も、今までに根強い思い込みが変わった経験があるはずだ。振り返ってみよう。

 保守主義からリベラルに鞍替えしたのは、何がきっかけだったのか。ピーナッツバターのおいしさに目覚めたのはいつだったか。

 他人に説得されて意見を変えたことは何回あっただろう。おそらく1回もないはずだ。