連載の79回等で述べたように、基礎年金に対する国庫負担率は、従来の3分の1から2分の1に引き上げられた。以下では、これまでの経緯と、その意味するところについて述べよう。また、これに対する財源対策について論じることとする。

 まず経緯を見ると、国庫負担率の引き上げは、2004年に決められたことである。04年に成立した年金制度改正法において、基礎年金の国庫負担割合を09年度までに2分の1に引き上げることとされた。その際、「恒久財源を確保して行なう」とされた。つまり、5年間の期限付きで宿題を与えられたわけだ。なお、ここで「恒久財源」とは、消費税の増税を想定していたと思われる。また、負担割合の引き上げに要する額は、2兆5000億から3兆円と言われた。

 しかし、自民党内閣は恒久的財源を手当しなかった。07年頃までは税収も伸びていたので、手当を行なおうと思えば不可能ではなかったと思われるのだが、それをしなかった。だから、「宿題をさぼっていた」と言わざるを得ない。

 ただし、まったく何もなされなかったわけではなく、少しずつ手当がされてきた。まず、04年度では、年金課税の見直しにより272億円を積み増すことが行われ、05年度には、定率減税の縮減による増収により1101億円が加算され、また06年度には定率減税の縮減・廃止による増収により2200億円が加算され、国庫負担率を約35.8%まで引き上げる措置が講じられた。さらに07年度においては、1124億円を加えて約36.5%まで引き上げられた。

 09年度は、「宿題」の提出期限の年であった。しかし、麻生内閣は、恒久財源の手当ができなかった。その代わりに、「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案」が作られた(09年6月19日に成立)。この法律では、09、10年度は、引き上げに必要な財源を、いわゆる埋蔵金(財政投融資特別会計の金利変動準備金)で措置することとした。ここまでが自民党内閣だ。

2011年度予算で恒久財源の手当が必要

 2010年度予算は、編成途中から民主党政権が担当した。しかし、上記のように埋蔵金による手当が認められていたためか、民主党政権は子ども手当には2.5兆円の予算を使って制度化した半面で、すでに決まっていた基礎年金の財源手当は行なわなかった。これは、やはり「怠慢」「義務違反」としか言いようがないものだ。11年度には恒久財源が必要とされているのだから、少なくとも準備は必要だったはずだ。

 そして、いよいよ2011年度予算を決める今年は、待ったなしに恒久財源が必要な時限である。しかし、これまでの経緯を見る限り、とても実現できるとは思えない。消費税については、「総選挙までは増税しない」ことが、むしろ公約になってしまっている。

 新聞報道によると、年金の積立金を用いる案が浮上しているようだ。こうした措置は、十分あり得ることである。

 第1に、年金の積立金は極めて巨額である。

 第2に、09年度の積立金の運用成績は良好だったので、「少しは使ってもよいだろう」という雰囲気がなくもない(09年度の収益率は、内外株式が大幅に上昇したことから、7.91%という高い値となった)。