「本格的に取り組めないものは、どこか他の企業の本業にしてやれないか」(エリザベス・H・イーダスハイム著『P・F・ドラッカー―理想企業を求めて』)
元GE会長のジャック・ウェルチは、その昔、自分がCEOに任命されたらすぐにしようと思っていたことがあった。ドラッカーに会って教えを請うことだった。
ドラッカーは、「GEはありとあらゆる種類の製品を扱っているが、すでに手がけていなければ、すぐに手をつけるつもりのものばかりか?」と聞いたという。「もちろんそのようなことはない」とのウェルチの答えから、世界で一位か二位になる気のない事業からは撤退するという「一位二位戦略」なるものが生まれた。
ここまでが、巷間に伝えられている話である。ところが、ドラッカー評伝の執筆のためにウェルチを取材したエリザベス・H・イーダスハイム博士によると、ドラッカーの言葉はさらに奥の深いものだったことがわかる。「どこか他の企業の本業にしてやれないか」。
それは、なんでも自分でやるという自前主義を捨て、顧客に対してはベストのチームで臨めということだった。すでに当時、ドラッカーは、GEにコスト削減を理由とするアウトソーシングをはるかに超えるものとして、コラボレーションを教えていたのだった。
こうしてウェルチは、事業の絞り込みとコラボレーションによって、GEの発展を確実にした。
「自らの強みに焦点を合わせ、強みでないことは他社に任せなさい」(『P・F・ドラッカー』)