滑走路先の立ち木の除去を怠り、開港が延期されるなどゴタゴタが続いた富士山静岡空港。暫定開港から約3ヵ月が経過し、本来の2500メートル滑走路での運用が開始された。県のトップも役人出身から学者に交代し、新たにスタート。しかし、搭乗率保証など取り除くべき“トゲ”、つまり過去の負の遺産が残っている。
「本日8時30分に完全開港ということで、本当にうれしかった」
静岡県の川勝平太知事は8月27日の定例会見で、こう語った。7月5日の県知事選で、民主党などの推薦を受けて当選したばかりの学者知事だ。退けた相手は官僚出身の自民党参議院議員で、前知事の後継者とされた女性。静岡県政は国政よりひと足早く、政権交代を実現させていた。
立ち木問題で迷走を続けた富士山静岡空港。6月4日に滑走路を300メートル短縮して暫定開港した後、8月27日に本来の滑走路2500メートルでの完全運用となった。これにより、300人乗り以上の大型機の発着が可能となり、着陸機を電波で誘導する計器着陸装置(ILS)も完全稼働する。空港が抱える課題の一つがひとまず解決したように見える。
県トップの交代後、静岡空港をめぐってはさまざまな動きが交錯している。空港の利用拡大を目指す戦略会議が県庁内に設置され、川勝知事自ら本部長に就任した。また、大学教授や女優、建築家らによる「富士山静岡空港の魅力を高める有識者会議」なるものも新たに組織された。
一方、地元有力企業の鈴与が100%出資する航空会社フジドリームエアラインズ(FDA)が7月23日、運航を開始した。76人乗りの最新鋭小型機(エンブラエル機)を使い、静岡と小松(1日2便)、熊本(同1便)、鹿児島(同1便)を結ぶ。静岡空港への乗り入れは国内外の航空会社6社による八路線となった。
JALと結んだ
搭乗率保証というトゲ
しかし、静岡空港の前途は依然として険しい。空港ターミナルビル見物客はにぎわい続けるが、肝心の航空機の利用者は伸び悩み、各路線の搭乗率は低迷している(下図参照)。
とりわけ、問題なのが日本航空(JAL)の福岡便。県が「搭乗率保証」する路線だ。