ダイヤモンド社刊 1800円(税別) |
「既存のものは古くなる」 (『創造する経営者』)
「時間の大半を今日の問題に使っている」などの言い方は、婉曲話法にすぎない。正確には「昨日の問題に使っている」「過去の修正に使っている」だ。
今日の事業すなわち今日の資源、活動、組織、製品、市場、顧客はすべて昨日の決定と行動の結果である。
加えて、ほとんどの人間が昨日の事業とともに育っている。彼らの姿勢、期待、価値観は昨日つくられた。したがって彼らは、昨日の教訓を今日使おうとする。
事実、あらゆる企業が昨日起こっていたことを正常とし、そのパターンに当てはまらないものを異常として退けている。
賢明かつ前向きで勇気のあった決定や行動も、それらが日常の仕事となった頃には陳腐化している。
それらが形成されたときには正しかったことかもしれない。 だが、その姿勢を身につけた者が意思決定する立場に昇進した頃には、その姿勢を形成した世界はもはや存在しない。
ドラッカーは、将軍たちが昔の戦争に備えたがるように、企業人も昨日のブームと昨日の不況に備えようとするという。諸行無常は総論で理解できても、各論いわんやわが事となると理解できなくなる。
「既存のものは常に古くなる。あらゆる決定と行動が、それを行った瞬間から古くなり始める。したがって通常の状態に戻そうとすることは不毛である。通常とは昨日の現実にすぎない」(『創造する経営者』)
直結して、じつにいい味を出している。