どの職場にも仕事を進める際、独特の企業文化、すなわち“ローカルルール”があるものです。例えば、稟議のプロセスや企画書の書き方、上司と部下の関係まで、長年の経緯で暗黙のうちに「決まりごと」になっているものも少なくありません。

 ところが、最近は会社合併の増加に伴い、異なる“ローカルルール”を持った社員同士が同じ職場で働くことも珍しくありません。すると、お互いが異なる“ルール”を持っていることから、ギャップが生まれ対立へ……という問題も発生しています。果たして、会社合併によりどのような弊害が起きているのでしょうか? 今回は私が取材した企業の実態を踏まえて、“ルール”が異なる人々が一緒に働くときの問題点とその解決方法を考えてみましょう。

「昨日の敵」と同じ職場で
働く時代になった

 会社合併が規模を問わず加速する時代。金融・商社・製薬など、かつては1社独自で反映していた企業もグローバル化の波に襲われ、これまで以上に規模やシェアを急速に伸ばす必要に迫られました。そして、「昨日の敵」と手を組むのも仕方なし……との経営判断を迫られているのです。

 先日、伺ったメガバンクもライバル行同士の合併によって生まれた銀行でした。その際お目にかかった法人営業部長は、合併時に関して次のように本音を語ってくれました。

 「『D社に口座シェアで負けたら恥だ』とライバル視していた銀行と合併することになり、当初は敵視していた銀行の行員(社員)と机を並べて仕事することに戸惑った。そして、その光景に慣れるまでとても時間がかかった」

 確かに、合併の戸惑いは大きなものでしょう。野球であれば阪神と巨人が1つのチームなってメジャーに対抗するといった感じでしょうか。

 一口に『合併』と言っても起こるのは、「業界3位と4位が企業合併。シェアで1位に浮上」といった【対等合併】だけではありません。この不況で経営が立ち行かなくなった企業を業界大手の企業が【吸収合併】するケースも増え始めています。また、「『創業30年。後継者不在で高齢化した創業経営者が売却を決意』などといった背景から吸収合併をする企業も多い」と金融機関やM&A(企業買収)に関わる関係者は語ります。

 ただ、いずれにしても、会社が生き残る選択肢として『会社合併』は経営者にとって当たり前のオプション(選択肢)になったことは間違いありません。

 そしてそれに伴い、社員が合併による違和感に戸惑うことも“当たり前”になりつつあるのです。