10月18日に名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開幕しました。今回のCOP10は、名古屋で開催されているにもかかわらず、その認知度が低いせいか、昨年の同時期にコペンハーゲン(デンマーク)で開催された気候変動枠組み締約国会議(COP15)に比べ、メディアの扱いがかなり小さいように思えます。

 唯一、日本の里山のような、農林業など人間の営みを通じて自然資源の持続可能な利用を世界で推進していこうという「SATOYAMAイニシアティブ」について合意が見られたことなどは、辛うじてメディアでも取り上げられましたが、その「SATOYAMAイニシアティブ」のニュースですら、山奥から出没したクマのニュースの陰に追いやられてしまった感があります。

COP10で議論される
3つのポイント

 そもそも、今回のCOP10で議論されていることは何かと言えば、大きく捉えると以下の3点になります。

(1)名古屋議定書
動植物や微生物など生物資源の利用により、医薬品や化学品、食品などを開発することで得た利益を、原産国(多くの場合は、途上国や新興国)に配分するルールを決める議論。

(2)生態系保全目標
陸地の13%と比べて遅れている、海洋保護区(現在1.17%)の数値目標設定の議論。

(3)途上国支援
動植物や森林の保護など、生態系の保全に対して、先進国が途上国に資金支援をどのようなかたち(金額、期間)でおこなうかの議論。

 つまり、これらの議論は、昨年の気候変動枠組み締約国会議(COP15)でも見られた、「先進国の保全」vs「途上国、新興国の利用、発展」の議論という図式なのです。

 この点から捉えると、「生物多様性条約」も、「気候変動枠組み条約」と同様、ビジネスマターであるように思えます。事実、この2つの条約は、1992年にリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された国連環境開発会議(地球サミット)で署名がおこなわれたことから、「双子の条約」と言われています。

企業との関係が
構築されてこなかった歴史

 しかし、「気候変動枠組み条約」に対しては、当初から企業の参画があったのに対し、「生物多様性条約」と企業との関係は、なかなか構築されてきませんでした。このことが、「生物多様性条約」が「気候変動枠組み条約」と比べて、認知度が低い理由の1つです。

 「生物多様性条約」と企業との関係は、地球サミットから遅れること14年、2006年にクリチバ(ブラジル)で開催されたCOP8で、民間事業者の参画の重要性に関する決議が採択されたところから、ようやく始まりました。ここで決議されたこととは、以下の3点でした。