次に篠田氏が向かったのは、スイスの製薬会社ノバルティスファーマだ。ここで、米国水準の事業会社としてのファイナンスのイロハを身に付けた。篠田氏が面白味を見出したのは、事業戦略という抽象的なものから、「営業所の経費」といった具体的なものまで全体像が見えることである。「専門分野ではなく事業全体を見たい」という喜びのツボは変わらない。

◇子育ては「良し悪し」と「好き嫌い」の戦い

 篠田氏は二人の子どもを育てている。彼女曰く「仕事がなかったら育児は無理」だったという。子どもを預けて仕事に熱中し、大人だけで話せる時間がある。これが彼女の精神のバランスを保つうえで貴重だったのだ。

 もちろん子どもには愛情をかけているが、それと子育てという行為が好きかどうかは別問題だ。子育てにおける母親の役割は、「こうすべき」という世間の「良し悪し」に縛られているが、本来はそこに「好き嫌い」の軸があるべきだと篠田氏は語る。

◇ついにたどり着いた天職

 その後、順調にキャリアを重ねつつも、篠田氏は「部下が増えるほど嬉しい」という、影響力の拡大を褒賞とする大企業的な世界に違和感を覚えていった。そこで浮上した選択肢が、糸井重里事務所である。「ほぼ日」のファンだった彼女は、財務の知識が必要なプロジェクトを手伝い始めたのだ。彼女の知識や分析力が非常に重宝され、糸井氏から直々入社を打診された。篠田氏は、具体的な物事から「要するに、こういうこと」を見つけて言語化し、それが人の役に立つことを強く実感できる環境に、無上の喜びを感じた。こうして、ようやく天職にめぐり合えたのだ。

■「ちょっと先を見る」のが好き(杉本 哲哉)
◇生き方がキュレーションメディア

 インターネットリサーチ事業を行うマクロミルと、スマートフォン向けキュレーションアプリ「antenna*」を手がけるグライダーアソシエイツ。杉本氏は、この2社を起業したシリアルアントレプレナーだ。彼は、良いと思ったものを人に薦めるのが大好きで、今乗っているクルマも、あちこちで薦めて4人に買わせたという。まさにキュレーションメディアのような生き方だ。