梅干しを食べてもらうための「きっかけ」づくりも積極的に行う。梅干しを食べたことがない子どもたちをどうにかするべく、修学旅行も受け入れる。「とにかく、食べず嫌いの子が多いんです」とは智良さんの母でもあり、取締役の岩本恵子さん。

「お母さんたちが食べさせていないの。思い込みで『すっぱいからダメ』っていきなり拒否する子が多いんです。でも、食べてみたら美味しいって。ふだんから食べていれば大丈夫なんですよ」

1粒100円の梅干しに大行列!「とまと梅」の正体「カフェ・ド・マンマ」の梅ドリア。「梅干しは洋風のメニューにも使えます。乳製品との相性はバッチリ」と恵子さん

 恵子さんは「ぷらむけいこ」名義で、梅干しの魅力を伝えるべくさまざまな梅メニューを考案して紹介、梅料理教室も開催。「現代の食卓にあった梅干し使い」をと梅干しを取り入れたイタリアンレストラン「カフェ・ド・マンマ」もオープンした。岩本家では当たり前の梅干し使いが反映されたメニュー。

 梅ドリア、梅オムライス、梅ピザに梅ロコモコ! 刻んだ梅干しが入ったライスを使い、梅ジャムを加えたデミグラスソースがかかったオムライスも定番の人気メニューだ。

 海を臨むおしゃれな店内は、「梅干し」を楽しむ若い女性たちで連日大盛況となっている。

1日2000個売り切る
新たな超人気「梅干し」が誕生

 地元JAでも、歯止めのかからない梅干し消費の落ち込みに危惧を感じていた。じつは梅の消費量が落ち込む一方、生産量はこの20年、ほぼ変わっていない。JA紀州販売部加工課課長の芦硲芳弘さんは「余剰分の梅に頭を抱えている状態でした」と語る。

 さらに原料の価格破壊も加速していた。その大きな原因が「つぶれ梅」だ。梅の等級はABCと細かく分かれている。最高級のA級品は無傷で皮が薄く、肉質が厚くて、やわらかいなどの条件を満たしたもの。つぶれやすい南高梅の中では大変貴重なものだ。一方、つぶれ梅に使われているのは等級どころか「規格外」の梅である。果皮が破れて果肉が原型をとどめていない、本来は主に梅肉原料として使用されているものだ。

 芦硲さんのところでは「ブランド価値の維持のため引き取らない」というが、生産者と加工業者が苦しい状況を抱えるなかで規格外の梅が紀州梅ブランドの「つぶれ梅」として安値で量販店に並ぶケースが増える一方だった。結果として、A級品が売れずにどんどん原料価格が下がるという悪循環が起きていた。

 芦硲さんは「新たな需要を喚起し、問題である若年層に受け入れられる商品が開発できればいいのではないか」と考えていた。

「かつお梅、はちみつ梅が登場してから40年以上たつが、調味液を使った画期的な『調味』梅干し商品が登場していませんでした。若い人にも梅干しが苦手なひとにも食べてもらうには『甘い梅干し』がいいのでは」(芦硲さん)