そうした金融政策の運営手法に対して、経済の専門家の間でも賛否両論ある。現象面で見ると、マイナス金利政策は銀行や保険会社をはじめ金融機関の業績を悪化させている。その意味では、一段のマイナス金利の深掘りには相応のリスクがあると考えるべきだ。

 足元では度重なる金融緩和にもかかわらず、わが国の消費者物価指数は下落している。異次元の金融緩和をもってしても需要が回復していないことを考えれば、金融政策だけで景気を回復させることには限界がある。

 むしろ、金融機関への影響など際限なき金融緩和の「副作用」とリスクが懸念される。今後、さらに思い切った金融緩和策を実施することは、最終的に、金融政策の効果の限界を露呈することにもなりかねない。日銀としても、そろそろそうしたリスクを念頭に置いた政策運営を求められる局面に入っている。

今後も続く円高傾向
背景には4つの要因

 冷静に日米の金融政策の方向性を考えると、利上げの可能性があるドルが強含み、金融緩和観測のある円が弱含みの展開になってもおかしくはない。しかし、実際の為替市場では一方的なドル高・円安は進んでいない。

 今後も円高傾向が続く可能性がある。背景には4つの要因が考えられる。

 まず、通貨の価値に影響を与えるわが国の“実質金利”の高さだ。国債の利回り(名目金利)を見ると、主要国の中では米国が一番高い。しかし、物価上昇を加味した実質金利を見ると、デフレの影響を受けてわが国の実質金利は米国よりも高い。その為、円はドルに対して強含みになりやすい。

 二つ目は、米国の為替政策の変化がある。米国政府はドル高による景気圧迫を懸念し始め、本音では緩やかなドル安を望んでいるように見える。この点は、イエレン議長などFRB高官の発言にも表れている。生産性の落ち込みを考慮すると連続的な利上げも進みづらい。そのため、利上げ観測が積極的なドル買いにつながるとは考えづらい部分がある。

 三つ目は中国をはじめとする新興国、そして欧州・ユーロ圏の経済的なリスクがあることだ。中国の減速懸念は解消されておらず、多くの投資家はリスクを取りづらい状況にある。欧州では、英国とEUの離脱交渉の工程、それが各国世論にどう影響するかが不透明だ。イタリアを中心に銀行の不良債権問題や自己資本の健全性への懸念もある。

 四つ目は、トルコを含めた中東の地政学リスクだ。トルコでは、失敗には終わったものの軍事クーデターが企てられ、政情が不安定だ。その虚を突いて、トルコや欧州でのテロ攻撃が増える恐れもある。それは欧州各国の世論を移民・難民の排斥に傾かせるだろう。

 これらの要素を考えると、ヘッジファンドなど大手投資家はリスク回避を念頭に動きやすい。そうした思惑は、キャリートレードの巻き戻しなどを通して、円高圧力を強める可能性がある。

 また、原油価格の下落などによる貿易収支改善から、経常収支の黒字額が増えている。それは円買いの要因になりやすい。わが国が世界最大の債権国であることもあり、円への需要も安定している。目先の米利上げ観測はあるものの、それでも基本的にドル安・円高が進みやすい状況にあるとみる。