今年は想定外のことばかり
アベノミクスも潮流転換
例年、お盆を過ぎると「back to school」(新学期準備)のごとく、各企業・投資家の視線は下期に向け計画修正を行う時期となる。
想定外のことというのは毎年のように生じるもので、下期に向け一定の計画修正はつきものだ。しかし、今年の場合、例年以上に大きな修正が必要なのではないか。場合によっては、ここ数年かけて作成してきた中期経営計画そのものの前提自体が大きく変わってしまったケースも多いのではないか。
そもそも今年の年初、1年を展望し、英国のEU離脱・Brexitを予想した人はどのくらいいただろうか。米国の大統領選でトランプ氏が本当に共和党の大統領候補になると予想できただろうか。日本では、東京都知事選があることなど誰も予想していなかったし、消費増税先送りも予想していなかった。
図表1は過去10年余りのドル円相場と想定為替の推移だが、アベノミクスの大前提であった、2012年後半以降3年続いた「円安・株高」の追い風の潮流が、「円高・株安」の逆風と、全く逆になってしまった。以上の大きな転換は日米欧の先進国中心に想定外の減速が生じたことに加え、政治面でも不確実性が高まっていることにある。今月21日に予定される日銀の「総括的な検証」も以上の環境下、事実上の計画変更が迫られたことによるものだ。
◆図表1:ドル円相場と想定為替
アベノミクスは3本の矢で為替の円安政策による株高の好循環をもたらしたとされるが、実際には、米国の為替スタンスが2012年末にかけ、それまでのドル安誘導からドル高容認に転じたことが大前提だった。
米国サイドからの「助け船」に乗って、その流れを加速し「円安・株高」の好循環を演出することをアベノミクス第1の矢である日銀の金融緩和が担った。米国からの追い風が未来永劫続くものではないなか、米国がドル高を許容している猶予期間のなか「短期戦」を行い、市場にサプライズを与える「奇襲攻撃」でデフレマインドを払拭しようとしたのである。
そのトレンドは、2013年、14年、15年までは続いた。しかし、2016年になって米国が「達磨さんが転んだ」で為替スタンスを転換した以上、従来の「短期戦」の「奇襲攻撃」は続けられない。日銀の「総括的な検証」もそうした問題意識の中で行われようとしている。