とはいえ唐突な契約打ち切りに対して、少し変わった余波が起きた。イソジンは明治が育て上げた「カバくん」というキャラクターで一般家庭に浸透していた。このカバくんは明治の知的財産なので、「明治うがい薬」にそのまま引き継がれることになる。

 一方でムンディはイソジンの商品イメージをなるべくそのままで売っていきたい。だからあらたなカバのキャラクターで「イソジンうがい薬」を販売しようとした。ここで一時、カバの類似キャラクターの使用差し止めを明治が訴える動きに出たが、最終的に両社で和解に至っている。

三陽商会製と英国製で生まれた
「価格帯の違い」が要因に

 三陽商会とバーバリーのケースはライセンス解消の事例としては、かなり変わった、欧米的な経営判断で起きたケースだと言えるだろう。

 三陽商会が50年以上にわたり育てたバーバリーは、日本市場で一般大衆に広く受け入れられる、コートのブランドとしては日本一メジャーなブランドに育つことになった。ところがこれはグローバルブランド戦略としては、ちょっと困ったことを引き起こしてしまう。

 本場イギリスのバーバリーは大衆ブランドではなく、一部の富裕層に向けたハイエンドブランドなのだ。ブランド的には一般大衆が気軽に着てよい商品ではない。特にバーバリーはブラックレーベルなどの新展開によりさらにハイエンド向けにブランドの舵を切ろうとしている最中だった。

 これがルイ・ヴィトンのバッグのように、価格が高いのだけれどなぜか日本の一般大衆の女性がこぞって所有しているという状態なら、まだ我慢しやすかったかもしれない。ところが三陽商会のバーバリーと英国のバーバリーは価格帯がちょっと違っていた。

 私は英国製のバーバリーコートを一着、三陽商会製のバーバリーコートを二着もっているが、三陽商会製のコート二着を合計した金額の方が英国製一着よりも安かった。しかし品質はというと、これはあくまで主観だが、三陽商会製のバーバリーのほうが私は満足している。

 日本に中国などアジアからの観光客が増え、そこでは英国製のバーバリーよりも安く良い商品が手に入るとなると、これは困ったことである。だからバーバリーは日本の百貨店チャネルにあれだけ強い三陽商会とのパートナーシップを切って、極論を言うと「日本市場の売上を失っても構わないからグローバルブランドの質を高める」考えを貫きたかったようだ。