ITを活用し、医療や福祉、行政、製造、流通などあらゆる業界でビジネスサポートを行っている、日本事務器(東京都渋谷区、田中啓一社長)の「ヘルスケアマスター」は、ヘルス&ビューティケアに関連する小売業が、地域のヘルスケアステーションとして生活者に認知されるための“武器”になりそうだ。

 ヘルスケアマスターとは、同社が国立健康・栄養研究所(東京都新宿区)との共同研究によって開発した、健康管理システム。血圧や体脂肪、体重、血管の柔軟性などの数字を測定した時系列で管理することができ、それに基づいて食事や運動などのアドバイスができる。

 同社が2008年から今年8月まで、イトーヨーカ堂(東京都千代田区、亀井淳社長)の5店舗で同システムを用いて、来店客向けの健康増進サポートサービスのテストを実施したところ、5店舗での会員登録数は、合計で1万5000人に上った。

 各店舗で毎月3日間、ブースを設けて巡回するかたちで運営したところ、「定期的に利用する人が多く、健康管理に対するニーズが高いことがわかった」と、日本事務器事業推進本部医療・公共ソリューション事業推進部コンサルタントの高山光尚氏は手ごたえを感じたという。

 期間中は管理栄養士や保健士が常駐し、生活習慣や食習慣をヒアリング。日本事務器でデータ化して国立健康・栄養研究所で栄養計算をした、およそ500種類ものレシピから、一人一人に適したレシピの情報提供も行われた。データベースには測定した数値や、どのような体の悩みを訴えているのかはもちろん、過去に行った生活指導まで蓄積されていくので、「継続してもらうほどに、アドバイスの精度を高めていくことができる」(高山氏)。

 会員登録をするとIDカードが発行されるが、カードそのものに情報を蓄積しているわけではないので、万が一、落としてしまっても情報が漏れるという心配がないように配慮している。

 DgSでも店頭で血圧計などヘルスケア機器を設置しているところは少なくないが、それを時系列でデータ管理をしているところはほとんどない。しかし、地域のヘルスケアステーションとしての役割を強化していくうえでは、病院にかかる前段階での、地域住民の健康状態を継続的に把握する仕組みがあると、信頼を醸成することにつながり、本当の意味での“かかりつけ”になっていくことができるのではないだろうか? 

「わざわざ病院に行くのではなく、日々の買物のなかで気軽に健康管理ができるのは生活者にとっても大きなメリット」と話す、日本事務器事業推進本部医療・公共ソリューション事業推進部部長・岡山公彦氏。「このシステムによって集客を促すと同時に、食材やサプリメントなどの小売店における販売促進に結びつけていくことで、システム導入とサービスの運営にかかるコストを吸収していかれるビジネスモデルの構築も考えている」と話し、今後は、DgS向けのシステム構築に取り組む予定だという。


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