「これまでは醤油の売上でオリーブオイルの赤字を補填するということもしていました。分社化したので、これからは単独で採算をとらなければいけない。でも、例えば一緒に働いている仲間が木が心配だからと残業しちゃう、というのは止められないんですよね(笑)。そこが難しいところ」

オリーブ畑

 ヤマサン醤油の有機オリーブオイルは108gで6156円(税込み)、慣行のブレンドも輸入品と比べると価格は高めだが、人件費などの経費負けをしており、正直「今でもトントンから赤」という状況だという。

「オリーブの実は熟する段階によって味も成分も変わります。そこでシーズンになると順々に収穫したオイルをブレンドして安定した味をつくるのですが、搾油している時にデフェット(欠陥)になる可能性が少しでもあれば除去していきます。ぶっちゃけ混ぜてもバレないっていうか、それくらいで品質が落ちない自信はあります。でも、そんなことはできないっすよ。『あいつ国産のクオリティを上げていこうよ、とか偉そうなことを言っているけど』ってなるじゃないですか」

 有機認証の取得の際も過剰なまでにすべてを整え、調査に来た人を驚かせた。トレーサビリティも完璧で、事前に連絡があれば見学も受け入れる。展示会などで留守にする時もあるが「可能な限り現場にいたい」と佐藤さんは言う。とことんストイックな姿勢は侍のようだ。

「髪型のせいか、海外の方からはオリーブサムライって言われたこともあります(笑)」

国際品評会でも金賞受賞
「日本のオリーブオイルは醤油にも合う」

ロサンゼルス国際エキストラバージンオリーブオイル品評会では2部門を受賞した

 悪戦苦闘の結果、生みだされたオリーブオイルはロサンゼルス国際エキストラバージンオリーブオイル品評会にて2部門を受賞、OLIVE JAPAN国際エキストラバージンオリーブオイルコンテストで金賞を獲得するなど世界的にも評価されている。なぜ、日本のオリーブオイルはこれほどまでに高い評価を受けるのか。

「外国産と日本産の違いという部分にもなりますが結局、収量の問題なんですよね。高品質の基準の一つに『手摘み』っていう表現があります。これも日本と外国では実はその意味が違うんです。外国で手摘みと言えば下にネットを敷いて、熊手のようなものでオリーブの実を落とすことを言いますが、日本では手で一つずつ摘むことが手摘みです。なぜ、そうするか。優良な果実からいいオイルができる。傷があればそこから酸化しますし、潰れていれば腐っていきます。そうした果実の混入を防ぐために選果という日本のならではの作業をします。外国の方からすれば『お前らそんな時間あるん?』という感じでしょうけど」

 世界から評価されるオイルは時に過剰とも思われる日本人の繊細さから生まれるのだ。