「日本企業に就職していったい何の意味があるのでしょうか」

 中国に進出した大手某日本ブランド、そこで総経理付きの“通訳兼秘書”として雇われた中国人女性の李さん(仮名)は、心のモヤモヤをこう訴えた。そして続ける。

「私は現地法人の立ち上げ時から、ここで働いてきました。総経理は何人も変わりましたが、私は15年以上頑張っても、いまだに『秘書』扱いです。給料も日本人並みではないし、いまだに役職も与えられていない。社内には私以上に日中の両サイドを橋渡しできる人材もいないのに、会社はそれを評価しません。日本企業に就職しなければ、もっと自分はキャリアアップできたかもしれません」

 李さんは社内でも最古参のベテラン社員であり、その情報量は目まぐるしく入れ替わる日本人駐在員とは比較にならない。だが通訳はどこまで行っても通訳に過ぎず、中国での現地採用を理由に出世からも取り残され、くすぶる日々が続く。

 こうした思いは彼女だけではない。中国の日系企業では李さんと同じ悩みを抱える中国人社員は少なくない。

「現地人材は通訳だ」と決め込む日本企業の評判は芳しいものではない。「出世できない日本企業」という悪評は、今やアジア全域に拡散する。このままでは外国の高度人材に背を向けられてしまう。

人口8000万人時代を前に
外国人材の活用は不可避

 外国人材はもはや海外拠点での採用にとどまらない。

「海外の人材を採用しないと日本企業の存続に影響する、ついに日本はそんな時代に突入しました」

 こう語るのは、グローバル人材採用を支援するベイングローバル社長の大澤藍氏だ。危機感を高める背景には、少子高齢化に伴う日本の若者の減少がある。内閣府によれば、2060年には日本の総人口は8000万人台にまで減少し、生産年齢人口は3800万人と2010年のほぼ半数近くに割り込むと予測する。