日本の高度経済成長は、端的にいえば、米国が大量の日本製品を買ってくれたからであり、米国が「世界の警察」として日本を防衛してくれたからだ。そして現在、世界中の新興国が、米国に製品を買ってもらって成長しているし、米国に守ってもらっている。しかし、エネルギーを世界中で探す必要がなくなった米国が、「世界の警察」をやめ、世界中の国からモノを買うのをやめて、米国製品を世界に売り始めたらどうか。実は、米国はなにも困らない。しかし、日本など世界の多くの国は、頭を抱えてしまうことになる。

 米国の孤立主義は、トランプ氏だけの荒唐無稽な考えとはいえない。米大統領選でトランプ氏のライバルであるヒラリー・クリントン元米国務長官も「TPPに反対」である。そもそも、バラク・オバマ大統領も、2013年9月対シリア内戦への軍事不介入声明を発表した際、「もはやアメリカは世界の警察官ではない」と宣言し、中東からの米軍撤退、将来韓国からの米軍撤退(公表)、2020年から2026年の間に沖縄から海兵隊を含む全米軍撤退(非公式)、NATO(北大西洋条約機構)の閉鎖又は欧州中央軍への統合、中南米、アフリカ地域からの米軍撤退等々を打ち出しているのだ。

 英国のEU離脱交渉が、「残留派」だったテリーザ・メイ首相によって行われるように、「ブロック化」の潮流は、トランプやボリス・ジョンソン英外相というポピュリストの煽動と片付けられない、確かな世界的潮流と考えるべきだ。そして、巨大な「生存圏」を持つ国が、「ブロック化」に動けば、資源も食料も防衛力も自立できない日本のような国はなすすべがない。安倍政権が、ロシアとの関係強化に前のめりになるのは、中国の海洋進出だけでなく、米国も頼りにならず、日本が「ブロック化」の潮流に飲み込まれて極東の一小国に戻ることを恐れているのではないだろうか。

日露首脳会談は
「負け組同士の歩み寄り」か

 結局、日露首脳会談とは、日本・ロシアそれぞれが弱みを抱えている「負け組同士の歩み寄り」のように思える。どちらがやや有利かといえば、衰えたりとはいえ、巨大な領土と資源を持って「生存圏」を確保できるロシアだろう。二島返還に楽観的な論者が多いが、果たしてうまく話が進むだろうか。

 プーチン大統領の「大国ロシア」のメンツを尊重せざるを得なくなり、「二島返還と平和友好条約への協議開始で合意するだけ」で、経済協力を前のめりに進めることになり、それでも安倍首相が「70年間、動かなかったことを、『わ・た・し』が、動かしました!」と、甲高い声とヘラヘラ笑いで、成果を誇ることになる。安倍政権の「いつもの光景」が繰り広げられることになるのではないだろうか。

参考文献
木村汎ら(2010)『現代ロシアを見る眼―「プーチンの十年」の衝撃』NHKブックス
ドミトリー・トレーニン(2012)『ロシア新戦略-ユーラシアの大変動を読み解く』作品社