国際政治の舞台で存在感を高めるロシア
プーチン大統領の“頭の中”を推測する
Photo:President of Russia
ロシアはグローバルなアクターとして国際政治の舞台に再登場してきた。
ウクライナへの介入、クリミアの併合に動いたロシアは西側の経済制裁を受け、エネルギー価格下落により打撃を受けた経済の低迷に一層の拍車がかかった。このような背景の中、ロシアは孤立を脱するべく、戦略的巻き返しを図っている。中東ではシリアの空爆に参加し存在感を高めている。プーチン大統領の東方戦略は中央アジアや極東で中国を巻き込み、新たな政治地図を描きつつある。
果たして、明年春にも予定されると伝えられる安倍首相の訪ロやその後のプーチン大統領の訪日により、北方領土問題は打開されるのだろうか。ロシアの動きは米国との対峙を決定的にし、「新冷戦」と言われる事態を招来する可能性はないか。ロシアは、日露関係は、何処へ行くのだろう。
戦略家と言われ、国内の支持率も高く、今後10年にもわたり大統領として君臨しそうなプーチン大統領の頭の中にはどのような国家戦略が描かれているのだろうか。大胆に推測してみれば、以下の通りである。
「ソ連邦の崩壊は20世紀最大の悲劇である。ロシアは多くの権益を失った。東欧諸国やバルト三国までEUやNATOに加盟し、西側の国境がロシアに迫ってきた。それだけではなくNATOはミサイル防衛の配備などでロシアの核抑止力の無力化を図っている。戦略の立て直しが必要である。
欧州への石油ガスの輸出は頭打ちであり、そもそもエネルギー資源の多くはアジア部に存在している。もはや欧州正面にロシアの未来はない。軍事予算を拡大し、ウクライナを中立化させ、黒海艦隊基地のあるクリミアの併合を行い、シリアの軍事基地を保全しNATOの拡大に備えるとともに、東方戦略を実現に移そう。ロシアの極東部の人口はわずか620万人であり、国境を接する東北三省で1億2000万人の人口を擁する中国に、極東の発展で過度に依存することは安全保障面から問題は大きい。