若年女性への国の支援は不十分
貧困の現状を知らせることも大切

橘 そういう子はネグレクトの家庭に多いですよね。お風呂に入らないだけじゃなくて、何ヵ月も服を洗濯しなかったりするから、とにかく臭う。気づいていないようなそんな子に対しては、「臭うよ、お風呂入りなよ」って伝えてから、お金出してラブホとかで休ませます。その子のためだって本気で思えるから。

中村 本当の貧困問題は、なにも持っていない人をどうするのってこと。容姿に恵まれず、学歴もなく、性格にも難があって、多くの人が関わりたくない人たち。本当にどうするの?って思う。

『最下層女子高生~無関心社会の罪~』(小学館)貧困やイジメ、さらには精神的・肉体的虐待、父親による性的虐待。自ら声をあげられず、福祉制度からもこぼれ落ちてしまった少女たちのリアルを暴く一冊

橘 そういう子は、私たちの手から届かなくなることも多いですね。金銭問題やホストや女の子同士でもめたりして、連絡がとれなくなっちゃう。その後、刑務所にって噂を聞くこともありました。

鈴木 そういう人は、生活保護を受けることも難しかったりします。

橘 生活保護も含めてどこかの機関に頼れる子っていうのは、自分の思いや状況をきちんと喋れる子ですよね。「あー」とか「ヤダ」みたいな単語しか話さない子もいるし。そうなると、自分が置かれている状況を説明することができないから、支援も受けられない。

中村 そういう苦境に陥る子たちは、どこを出口に支援を受ければいいんですかね。性善説も通用しないし、階層が違うので会話も難しいだろうし、僕を含めて一般人が助けるのは無理でしょう。

橘 正直、公的な支援制度はまだまだ不十分。特に、若年女性を中長期的に保護する施設は充実させるべきだと感じています。18歳以上の中長期保護なら、婦人保護施設がありますけど、規則が厳しい上に、高齢者の方との共同生活をためらったりで、結局合わなくて入りたくないって子も多い。18歳未満の児童相談所も、ものすごくルールが厳しいから、人を選びますよね。

『貧困とセックス』(イースト・プレス)最底辺のセックスワーカーたちを取材してきた、鈴木大介氏と中村淳彦氏が徹底対談。日本の性産業と貧困のリアルを目の当たりにしてきた両氏が、教育・福祉・介護の悲惨な状況や日本社会の構造的問題を語り尽くす

鈴木 本来なら、若年女性専用の定住型保護施設と、立ち寄り型の施設、両方あるといいですよね。

橘 貧困女性にとっての選択肢を増やすことは大切だと思います。

中村 だけど、社会保障を急速に縮小させている今の国や行政の流れをみると、本当にお金はなさそう。少子高齢化の中でこれからの世代を大切にするというなら、高齢者への支援やサービスを減らすという英断が必要でしょう。団塊世代の方々から「俺たちはもういいから、若い子をなんとかしてくれ」という声はほしい。

橘 こういった問題も含めて、すぐに支援に繋げるのは難しいとは思いますが、現状を知る人が増えていくことは大事。だから、鈴木さんや中村さんが続けていることは、貧困の状況を伝える意味でも凄く意義があることだと思います。

鈴木 周知させるだけじゃなくて、その伝え方も本来なら配慮する必要がある。だからこそ今回、NHKがやらかしたことは看過できませんよね。