廃炉費用と高速炉の検討は始まったが
その他の課題は大して進んでいない

廃炉費用や核燃料サイクルを除き、原子力に関連する課題についての検討は原発事故以降、大して進んでいない。メディアが報じないその背景とは

 先週は、原子力政策に関連する政府の会合が3つも開催されました。

 そのうちの2つでは原発の廃炉費用の負担が議論されました。電力自由化を議論する“電力システム改革貫徹のための政策小委員会”では、日本全国の原発の廃炉費用を新規参入した電力会社にも負担させる議論が始まり、“東京電力・1F(福島第一原発)問題委員会”(東電委員会)では、増大する1Fの廃炉費用(及び賠償・除染費用)をどう賄うか、それに向けて東電をどう改革・再編するかという議論が始まりました。

 もう1つは核燃料サイクルに関する高速炉開発会議で、先月開催された原子力関係閣僚会議での方針を受け、“もんじゅ”の廃炉とそれに代わる高速炉の今後の開発方針が議論されました。

 原子力政策の観点からいうと、原発の廃炉費用の負担と核燃料サイクルのあり方の見直しという課題については、政府がようやく検討を始めたと言えます。そのどちらも世論的には反発が強くて賛否が大きく分かれる問題ですが、結論がどうなるかはともかくとして、検討を早く進めることが重要です。

 というのは、政府は2014年に“エネルギー基本計画”を策定し、そこで原子力を重要なベースロード電源と位置づけ、原発の再稼働を進めていくと明記しているからです。ちなみに、それを受けて2015年に策定された“長期エネルギー需給見通し”では、2030年の発電量に占める原子力の割合は20~22%とされています。

 この“エネルギー基本計画”は法律上3年ごとに改訂するので、2017年、つまり来年が改訂の年となります。したがって、特に2030年時点での原子力の割合を高く見積もっている以上、改訂に先立って原発の活用に必要な環境整備をできるだけ早く行うことが政府の責務のはずです。

 そう考えると、改めて問題に感じるのは、廃炉費用や核燃料サイクルについては検討が始まったものの、原子力に関連するその他の課題についての検討は原発事故以降、大して進んでいないということです。

 たとえば、今年は電力小売りの自由化が行われましたが、実は自由化と原子力発電所は非常に相性が悪いと言わざるを得ません。火力発電所ならば1基あたり1500億円に対し、原発は4000~6000億円と格段に大きい投資が必要となりますし、施設の維持管理にも多額のコストがかかります。