去る11月17日にヤフーCEOの辞任を発表したジェリー・ヤンは、その就任中次々と「アン・ラッキー」な出来事に見舞われた。

 ヤンが、スタンフォード大学の学友デヴィッド・ファイロと創設したヤフーは、ただのディレクトリーからサービスやコンテンツを付け加えた総合サイトに拡大し、無敵のインターネット・ブランドに成長した。株価が落ち込んだインターネット・バブル直後、ヤフーをメジャーなインターネット・メディア企業に育て上げようと、ハリウッドからテリー・ゼメルを招聘してCEOに仕立て上げたのもヤン自身だった。

 だが、テクノロジーよりもコンテンツ・ビジネスを重視するゼメルの方針は、ビデオや映画,テレビ番組がインターネットに溢れかえる今ならまだしも、当時はまったく機能せず。そうこうするうちに、グーグルが検索エンジンという武器一つで乗り込んで来て、市場を検索広告の競争の場にすっかり変えてしまったのである。

 ヤンがゼメルに代わってCEOに就いた2007年は、グーグルの株価がひたすら上昇を続け、ついには700ドル以上をマークした年である。エンジニア出身のヤンが、グーグルが引き起こした検索広告競争にのめりこんでいったとしても仕方がないことだろう。検索広告だけではない。メール、ブログなどさまざまな分野で、ヤフーはグーグルが打ち出す新サービスを必死に後追いするパターンに嵌ってしまったのだ。

 それでも検索市場のシェアでは、約21%対60%とグーグルに溝をあけられるばかりとなる。そんな戦略上のタイミングのズレに加えて、ヤンの17ヶ月のCEO在任中は、中国の反体制運動家の情報を中国政府に漏らしたことで非難され、社員のレイオフを2度行い、有能な社員が列をなして辞め、マイクロソフトの買収を防衛した挙げ句に株価が3分の1以下に下がり、年間8億ドルの収入をもたらすと期待されていたグーグルとの広告技術提携は、独占禁止法に抵触するリスクでお流れになった。

 加えて現在の経済不況によって、ヤフーが得意とするディスプレイ広告市場が縮小するだろうと見込まれている。辞任前に開かれたあるテクノロジー会議では、ステージ上のヤンがヤフーの今後の戦略をまったく描けていないことに落胆と驚きの声が上がった。一体これからヤフーはどうなるのか。