飛んできたボールを捕球する野球選手写真はイメージです Photo:PIXTA

シルバースラッガー賞を受賞しオールスターにも5回出場したスター選手スティーブ・サックスと、通算75本塁打と200奪三振を達成したリック・アンキール。どちらもMLB史に名を残す名選手だが、実は2人とも暴投癖に悩んだ過去を持つ。彼らはいかにしてイップスを克服したのか?※本稿は、パフォーマンスコーチのジム・マーフィー著、鶴見紀子訳『世界のハイパフォーマーが学んだ「最高の自分」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

ひとつの送球エラーをきっかけに
イップスに陥ったサックス

 1982年、ロサンゼルス・ドジャースの二塁手であるスティーブ・サックスは、ナショナルリーグ新人王に輝いた。

 次のシーズンの序盤、彼が外野からのボールを受けて捕手に送球したとき、ボールが捕手のすね当てに当たってはね返り、その間に三塁走者がホームに生還して得点を挙げた。サックスは次のように振り返っている。

《誰にでも起こりうることだった。だが私はそのエラーのことをあまりに考えるようになり、頭から離れなくなった。さらに新聞記事を調べ、自分がシーズン序盤にいくつかエラーをしているのが分かった。私は、「この調子だと今年はエラーの数が100回を超えるぞ」と思うようになった。

 こうして恐怖心で自分にプレッシャーをかけるようになり、当然ながら翌日も送球でエラーをした。その週の後半にはさらにいくつか送球エラーがあった。あっという間に頭の中に恐ろしい怪物(訳注:エラーをするのではないかという恐怖)が住みつき、私はそれを追い払うことができなかった。