安倍晋三元首相 Photo:SANKEI
かつて自民党の巨大派閥を支えたのは、圧倒的な資金力と人事権だった。田中角栄や竹下登は「カネの力」で仲間を集め、政界に大きな影響力を築いた。一方で、約100人を擁する最大派閥へと成長した安倍派は、そうした金権政治とは異なる仕組みの上に成り立っていた。なぜ安倍晋三は「カネを配らず」に巨大派閥を維持できたのか。その背景には、小選挙区制の導入によって変質した自民党の権力構造があった。※本稿は、読売新聞グループ本社代表取締役会長兼主筆の老川祥一著『長期政権の条件』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
派閥が大きくなりすぎると
分裂や不祥事に見舞われる
派閥が大きければ大きいほど、そのリーダーの政治的影響力は大きくなる。自民党の場合は総裁の座が首相の座と直結するから、首相をめざす実力者はもちろん、首相に対して、あるいは政局運営に影響力を行使しようとする派閥の領袖は、競って自派のメンバーをふやそうと試みることになる。
しかし、あまりに派閥が巨大化すると、かえって派内における情報の交流に目詰まりができたり、いくつかの小グループができて互いに反目し合ったり、という不協和音が生まれがちだ。派閥を維持するための資金集めや内閣・党の役職の配分にも困難が生じる。100人を超す巨大派閥を作った田中角栄さんや竹下登さんの派閥が、分裂したり不祥事に見舞われたりしたことは、周知の通りだ。
では、派閥の力の効用を最大限に生かすことができて、しかも派閥の結束に亀裂が入るような事態にはならないという、派閥の規模に関する均衡点はどこにあるのだろうか。
かつて安倍政権後も影響力を維持していた安倍派への入会希望者がふえて99人もの大派閥になった時、安倍さんの後見人ともいうべき森喜朗元首相が、「派閥には適正規模というものがある。大体100人を超すあたりからおかしくなるから気を付けた方がいいよ」とアドバイスしたことがあった。







