資料だらけの会議はしない
自分の言葉で簡潔に話せるか?

 もう一つ、私が改革をしたのは会議だ。

 多くの大企業と同じように、伊藤忠も会議ばかりの会社になっていた。期初から年間見通しを予測し、その裏付けとなるようなデータをかき集め、分厚い資料を作って会議に臨む。1年どころか、たった半年で経済環境が激変することもあるというのに、これは無意味なことだ。

 さらに、発表する現場の人間は、居並ぶ役員など上層部からの、多方面にわたる質問に完璧に答えようとするあまり、細かな数字から何からすべてを用意しようとし、会議資料はさらに厚みを増す。

 ビジネスの本質に関係のある質問ならいい。しかし、およそ本質とはかけ離れた、個人的興味による質問――たとえば、「この県の人口は何人か?」などといった類いのもの――を聞く役員もいた。聞いた本人は、何となく疑問に思って口にしただけなのだろう。しかし、現場の人間は質問を真に受けて、慌てて確認作業に走ったりする。

 かくして本社の現場はもちろん、関連会社に至るまでが資料作りに明け暮れる。しかし、カラフルな資料を作って、難しい質問に完璧に答えることで、仕事をした気になるようでは困る。これでは、本来力を入れるべき商売がどんどん疎かになっていく。

 社長に就任した後、私は会議の実態を調べることにした。多少面倒ではあるが、こういうことは、きちんと数値化してみるに限る。

 すると、重要会議は2009年度で828回、総会議時間は1448時間、会議資料の厚みは162.2センチであった。そこで社長就任初年度(2010年度)に、開催回数を21%、会議時間を22%、資料の厚みを13%、それぞれ削減をした。以降もこの取り組みを継続し、2015年度では、開催回数は41%、会議時間は50%、資料の厚みは48%も削減されている。

 社員たちには、メモ程度を用意し、自分の言葉でビジネスの要点を、きっちり話せるようになってもらいたい。私自身も、意味のない「意地悪な質問」はしないようにしている。

 ただ、これらの改革を行うときに、私の独断や、一部の人間のみの意見で動かないように心がけてきた。これだけ大所帯の会社だ。ある改革をやったがために、思いも寄らないような副作用が起きる可能性だってある。当たり前のことではあるが、社員、特に末端の人たちの意見をよく聞くこと、そして仮説検証のプロセスをきっちりと踏むことが重要だ。

 一連の施策によって、真っ当な商売をするための「か・け・ふ」に磨きをかけたつもりだ。そして、これらの施策は「非資源ナンバーワン」、さらに「純利益ナンバーワン」に、大きく貢献したと感じている。

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