経営×統計学

ビジネスの現場で実践 統計学で差をつける!(1)

ホットに切り替える
タイミングを計るため
統計の力を導入

 自販機のオペレーションにおいて、最大の難関は「コールド飲料とホット飲料を切り替えるタイミング」にある。

 基本的に自販機はコールドが前提で作られているため、ほとんどの機種で最大でも半分のスペースしかホットにできない。冬になると気温の変化に応じて6~7種類ずつ3段階に分けて切り替えていくのであるが、1台当たりの作業が30分~1時間かかるため、一気に切り替えることが難しい。もし気温の変化を読み違えると、ホットに切り替えたことでコールドの需要を奪ってしまい販売数量を落としてしまうリスクもある。

 そこでウォータービジネスは、統計の力を借りた。渡辺安虎・香港科技大学ビジネススクール准教授を中心とした経済学者チームと共に、最適な切り替えタイミングを探ったのである。

 まず、自販機をホットの需要の強さごとに似通った特徴を示す12のクラスター(集合体)に分けることから始めた(クラスター分析)。

 そこから12年の気温条件を基に、最適なタイミングとなるようシミュレーションを実施した。結果は図3‐2の通りで、クラスター別に売上高を最大化する最適な切り替えのタイミングが見え、最大2%の改善効果が挙がるモデルが完成した。

 とりわけ現場を驚かせたのが、同じエキナカの自販機でも切り替えのタイミングが違う分析結果が出たことだ。例えば、新幹線のホームでは、買ってもすぐに暖かい車内に入るためホットの需要が弱いといったことである。

 現場と情報共有することで、ホットへの切り替えのタイミングや自販機ごとの優先度、何種類投入するかなどの判断基準がクリアになり、成果につながった。

JR新宿駅にある「常温」の飲料を買える自動販売機 Photo by Takeshi Kojima

 さらにユニークなのは、このような取り組みからホット・コールドではない第三の軸が生まれたことである。それが「常温」だ。

 現場の提案を基に、東京駅を中心として20度設定の「常温」の飲料を1年間、試験販売したところ、これが意外にも売れ続けた。水やお茶だけでなく炭酸飲料やジュースの需要もあった。14年末には、全国で約30台にまで常温販売対応の自販機が広がっている。

 こうしたプロジェクトの中心となって取り組んできた笹川俊成・取締役営業本部長は「現場の知見とデータ分析とを組み合わせて、仮説と検証を繰り返すことが重要だ」と話す。

「経営×統計学」



週刊ダイヤモンド編集部


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