依然として欧州市場ではディーゼル車の構成比が半分近くを占めるが、もはやEVやプラグインハイブリッド車(PHV)といった電動対応車なしでは、到底クリアできない数値だ。そのため、これまでPHVのみを本命視していたドイツ勢は、EVにも注力することで規制を乗り越えようと必死になっている。

 排ガス規制もまた、ディーゼル車主体のドイツ勢には逆風だ。現在の規制基準である「ユーロ6」は段階的にハードルが高くなってゆく。その上、VWのディーゼル不正を受けて、今後は実路走行試験(RDE)が義務づけられるようになる。試験場での「ごまかし」が効かないRDEの導入は、ドイツ勢にとって死活問題だ。「ディーゼル車だけで基準を超えようとすると対応費用が膨大になる」(ローランド・ベルガーの大橋譲プリンシパル)。EVを車種展開の中枢に据えて、電動化を急ぐより術はないのである。

中・米でHEV外し
対応を迫られるトヨタとホンダ

 そして、ドイツ勢がEVシフトを急ぐ最も説得力のある根拠は、実は違ったところにある。

 それは――、中国市場の獲得だ。特にVWは、「中国が世界最大のEV市場になることは疑いようがない」(ユルゲン・シュタックマンVWセールス&マーケティング担当取締役)と言い切る。VWにとって中国は、世界販売台数の3割を握る最重点市場。EVの拡充により、中国市場におけるプレゼンスをさらに堅固なものにしようとしているのだ。

 そもそも、中国の環境規制は、深刻化する大気汚染を食い止める目的もあり、世界で最も厳しい欧州基準「ユーロ6」がベースとなっている。ドイツ勢のみならず、世界の自動車メーカーが欧州並みの対応を迫られている。中国市場を攻略する上で、EVなどの電動対応車の投入は欠かせない。

 さらに、中国政府は20年までに、EVとPHVを合わせた新エネルギー車を500万台まで増やす壮大な計画をぶち上げており、普及を後押しするための補助金制度も充実している。ドイツ勢が、ホームタウンの欧州市場と世界最大の中国市場を席巻するためには、EVシフトは必然の流れなのだ。

 翻って、日系メーカーはどうか。

 彼らとて電動化の潮流を無視してきたわけではないのだが、トヨタ自動車やホンダは電動対応車ではハイブリッド車(HV)を中核に据えてきた。ところが、中国では、紆余曲折あった末に、補助金対象からHVを外されてしまった。米国カリフォルニア州のZEV(排ガスゼロ車)規制でも、HV外しの流れは変わらない。

 トヨタ、ホンダは共に中国でのPHVの新モデル投入で巻き返す予定。長期的には燃料電池車(FCV)で技術優位を保ちたいところではある。だが、ドイツ勢を筆頭に世界の自動車メーカーがEVへ舵を切った今、日系メーカーは疎かにしてきたEV拡充の対応を迫られている。