生命の本質は絶滅にあり

 本連載ではこれまで多くのSFと科学ネタを扱ってきました。そこには、ヒトやモノゴトの本質が示されていました。

 本講で紹介する『大絶滅(Extinction)』(1996)は、異端の古生物学者デイヴィッド M. ラウプ(David M. Raup)によって書かれた、地球生物大(量)絶滅の歴史であり、その原因探究の試み(*1)です。

 現在、地球生物学上、5回の大絶滅が知られています。1オルドビス紀末(4.4億年前)、2デボン紀末(3.6億年前)、3ペルム紀末(2.5億年)、4三畳紀末(2.1億年前)、5白亜紀末(6500万年前)の大絶滅です。

 最新の白亜紀末ものが、いわゆる「恐竜の絶滅(*2)」と同じものですが、このときよりももっと深刻な絶滅を、生物は繰り返してきているのです。

 ペルム紀末のものでは生物種の9割以上が絶滅しました。個体レベルで言えば全生命体の99%以上が滅んだという、徹底的な絶滅です。

 こういった大絶滅の繰り返しの中で、この地球に歴史上存在した生物種のほとんど全て(99.9%以上)は、既に絶滅してしまっています

 統計的に見れば、生物種の本質のひとつは「絶滅(いつか必ず滅びる)」であるとも言えるでしょう。

確率1/2のコイントスゲームをカジノでやったら?

 書中でラウプ博士が示す、「問い」があります。

もし、あなたがカジノでコイントスゲームをやったら、どちらが勝つでしょう? 表裏の確率は完全に50対50です。タネも仕掛けも根性も運も所場代もありません。

 この条件でお金をかけた勝負をしたとして、果たして胴元(カジノ)が勝つか、プレイヤー(あなた)が勝つか、それとも引き分けか。どれでしょう?

三谷作成

 まず少し時間を取って、考えてみてください。トンチでも何でもなく、明確な理由があり、勝敗があります。そしてそれは生物という存在の、そして自然というものの本質でもあるのです。

*1 『大絶滅』の副題は「遺伝子が悪いのか? 運が悪いのか?」である。
*2 鳥類がその唯一の生き残りと考えられている。