2%の成長率は「低成長」ではない!
インフラがある程度整っている先進国が、インフラ投資をしても経済効率はかつてほど高まりませんし、ありとあらゆるモノがあり溢れている昨今では、消費そのものが劇的に伸びるのは不可能だと思われます。そういった意味では、米国経済は低成長に甘んじているといわれて久しいですが、それでも近年2%台の成長をしているのは凄いことであると考えています。
経済メディアは米国の2%台の成長を「低成長」と評価し、否定的な見方を披瀝していることが多いのですが、そもそも近年の2%台の成長率と住宅バブル期の4%台の成長率を比較すること自体がナンセンスです。
2007年までの住宅バブル時は、米国民が住宅を担保に無理な借金を重ねて、過剰な消費を繰り返していたのです。借金に過度に依存した成長率を通常の成長率と取り違えて論評していることが、根本的な認識の誤りにつながっているわけです。
同じような認識の誤りは、2%台のインフレを目指すという日銀の金融政策にも当てはまります。
グローバル経済下では先進国で実質的な所得が伸びにくい状況になっているのに加えて、日本でバブル真っ盛りだった1980年代後半でも、物価上昇率は1%台後半であり、この時期には、企業が無謀ともいえる借金をして設備投資や土地・株式への投資をしていたため、成長率だけでなく物価上昇率までもが嵩上げされていたことを考えると、いまの日本で2%台のインフレを目指す必要はありません。
経済メディアのなかで著名な経済学者たちが間違った認識を垂れ流すことによって、多くの人々がそれを常識として捉えてしまっています。こういった現状を変えることができなければ、米国や欧州、日本などでまともな経済政策や金融政策が実行されることは期待できないでしょう。
経済学の世界が現実をありのままに直視し、経済の本質を捉えることができるように変わってほしいと切に願っています。