「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」「なんだかチームがワークしていない」「上司が何を考えているのかわからない」……あなたの職場はこんな悩みを抱えていないだろうか。今や多くの職場で“当たり前”となった1on1。2017年に発売されて以降ベストセラーとなった1on1の入門書『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(本間浩輔・著)は、ヤフーが実践してきた対話手法について、今日から実践できる内容が満載だ。本記事では、「異動と人材育成」について、著者の本間浩輔氏に伺った。

「あの人は使えないから異動」は最低。では異動のベストタイミングいつ?Photo: Adobe Stock

●異動は最強の「育成」

 やる気がある。でも、どうしても成果が出ていない。そういう部下にどう向き合うか――それは上司にとって避けては通れないテーマです。

 私が「この人は異動させたほうがいいな」と判断するのは、いつも同じ3つの条件が揃ったときです。

1.明らかに成果が出ていないとき
2.1の理由がはっきりしているとき
3.その人が他の部署で活躍できそうだと見通しが立つとき

 この3つが揃えば、「次の可能性を開く」意味での異動を考えます。ただし、そのうち1つでもあいまいな部分があるときは慎重になります。

「本当に本人の問題なのか?」「異動先でうまくやれるのか?」と迷うこともある。でも、今のままでは本人の成長につながらないと判断すれば、異動という選択肢は大いにあり得るのです。

●「合わないから異動」は責任放棄

 私はこれまで一度も、「この部下は面倒くさいから異動させよう」と思ったことがありません。なぜなら、部下との関係性をつくるのは上司の責任だからです。上司がそこから逃げたら終わりです。

 もちろん、相性の問題はあります。「この人とは波長が合わない」と感じることは誰にでもあります。だからこそ、「この人は別の上司のもとでならもっと力を発揮できるかもしれない」と思ったときは、その人のために異動を提案することもあります。

 あくまで「本人のためになるかどうか」。それを外して異動を決めたことは、これまで一度もありません。