社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

【視野を広げたいと思ったら】留学や転職をしなくても世界が広がる効果的な方法Photo: Adobe Stock

世界を「縦」に広げる挑戦で同じ場所にいる人の違う価値観に気づく

 本書では自分の道が見えてくるためのSTEP1は「世界を広げる」こと、その中でも「世の中の仕組みを知る」ことから始めると書きました。

 さて、「世の中の仕組みを知る」ことが世界を広げるための「座学」だとしたら、次は実際に世界を広げるための「行動」をしていきます。

 それが世界を「縦」と「横」に広げる挑戦です。
 世界を「縦」に広げる挑戦とは「自分と同じ場所にいる人でも、違う価値観を持っている」と知ることです。「横」に広げる挑戦とは、「自分がいる場所とは違う世界、触れたことのない分野」に踏み出すことです。

世界を「縦」に広げる方法とは

「縦」への世界の広げ方の1つに、普段やっていることの価格帯を上下にずらす方法があります。いつもより高価格帯や低価格帯の世界を体験してみるのです。

「馴染みのある場所」で縦の広がりを体験するには、飲食店が気軽に挑戦しやすいかもしれません。ためしに、客単価がエリアの平均から大きく外れているのに、繁盛しているお店に行ってみたりするのはどうでしょうか?

 エリアの平均から外れた高価格でも長年営業しているお店には、独自の世界があることが多いです。店全体が店主の世界観で演出され、照明や音楽、器、接客まで、全てが体験としての価値を生み出すように計算されている店もあります。そのような店を訪れることで、同じ飲食をする場にも様々な価値があることに気づくでしょう。

 逆にエリア平均より低価格帯のお店を訪れると、その価格で店を存続させるための工夫に気づくかもしれません。豊富に見えるメニューであっても使う食材の種類が限られていて仕入れの効率化ができていたり、お客さんが楽しく店の手伝いに参加する仕組みがあったり、回転率が高かったりと、採算が取れる経営努力が隠れています。お金をかけなくても楽しめる価値が見えてくるでしょう。

 こういった挑戦をして縦に世界を広げることで、慣れ親しんだ場所でも、そこには全く異なる価値観が存在していることに気づけます。

 留学したり転職をしたりすることもなく、いつもの行動範囲の中で世界を広げられるので、リスクも少なく気軽にできます。むしろ慣れ親しんだものだからこそ、「こういう価値観もあるのか」と新鮮な発見にもなります。

 そして、その経験は自分が普段いる世界をより深く理解し、自分自身の中にある、無自覚の価値観を改めて発見することにもつながるのです。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。