社会的に関心が高かったこともあり、公正取引委員会が判断を説明するという異例の展開になったヤフージャパンと米グーグルの検索エンジンの提携問題。ヤフーは、他のインターネット上の付加価値サービスの開発に専念するために、検索エンジンをグーグルに任せたが、シェアが90%を超えることから、独占禁止法を用いてグーグルの弱体化を狙う勢力が声を上げ始めた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
この12月2日は、じつに奇妙な巡り合わせの日となった。
午前中に、自由民主党内に発足した「インターネット検索問題調査研究会」(近藤三津枝衆議院議員・事務局長)が、ヤフージャパンと米グーグルの提携に関する論点の整理と問題提起を列挙した「中間取りまとめ」を公表した。
その夕方に今度は、7月27日にヤフージャパンが提携を発表した後に、米マイクロソフトや楽天から(ヤフー・グーグル提携に関する再調査を求める)申告書を提出されていた公正取引委員会が、実質的に「両社の提携には問題がない」との見解を発表した。
その内容は、ヤフージャパンが提携の発表に先立って、公取委に対して事前相談を持ちかけた際に、公取委が示したという判断とほぼ同じだった。午前中の問題提起に対する回答とはなっておらず、これにて一件落着にもなっていない。今も、ヤフー・グーグル提携問題はくすぶり続けているのである。
というのも、報道も含めて一般的には、“表側”に見えるサービス事業者別の数字を使って「(すでに2大事業者であるヤフーとグーグルの)検索エンジンのシェアを足すと90%を超える」と解説されている。確かに、米ネットレイティングス社の調査(2010年4月)では、国内の検索サイトのシェアはヤフージャパンが53.2%、グーグルが37.3%なので、両社を足すと90.55%になる。
だが、実際に検索サイトの“裏側”で動くシステムの提供事業者を調べていくと、意外なことが判明する。現在、グーグル製エンジンを採用している検索サイトにNTT系のgoo、NEC系のビッグローブがあり、ヤフー製エンジンを採用しているサイトには楽天のインフォシークやニフティ、エキサイトなどがある。これらもすべてグーグル製エンジンに切り替わることになる。
合算していくと、国内の検索システムの本当のシェアはヤフージャパンとグーグルで96.4%になり、限りなく100%に近づく。その他、自前のエンジンを使うマイクロソフト、韓国製エンジンを使うライブドアと中国製エンジンを使うバイドゥを足しても4%に満たない。事実上、独占状態になるのである。