2004年から06年に、スウェーデンの財務大臣を務めたペール・ヌーデル氏の特別寄稿の第2回を掲載する。
政治・経済とも閉塞感の強い日本に対し、高い成長と充実した社会福祉を実現している国の一つが、北欧のスウェーデンである。スウェーデンは、1990年代にバブルの崩壊で、日本をも上回る金融危機を経験した。日本との違いは、その90年代に税制、財政、福祉、年金制度について、「世紀の大改革」と呼ばれる構造改革を敢行したことだ。もちろん、社会保障も含めた国民負担率は65%と日本の39%を大きく上回るが、国民はこのスウェーデン・モデルを支持している。いまや同国は高福祉・高負担の停滞した国ではない。
前回(2010年12月17日掲載)は、時代認識、改革の狙いと成果を中心に述べたが、今回はスウェーデン・モデルのどこに競争優位性があるのかについて語る。(※本寄稿は昨年11月中旬に日本総合研究所主催で行われたシンポジウムおけるキーノートスピーチを要約した。詳しくはこちらを参照)。
構造改革の結果得られた
6つの競争優位性(続き)
※前回の②「開放的な経済政策」に続く
③信頼できるソーシャルブリッジ
スウェーデンの3番目の競争優位性について、話を移していきましょう。それは信頼のできるソーシャルブリッジを、どうやって作っていくかということです。国際競争の結果、企業が破綻しますと、失業が増えます。
ソーシャルブリッジとは、経済構造の転換によって発生した余剰人員が新しい就業機会をつかむことができるようにしてあげることです。その際、彼らを新しい状況に適応させるためのコストは極力抑えます。重要なことは、このソーシャルブリッジとは、労働者の保護であり、雇用の保護ではないということです。