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イタリア旧国鉄が取り入れる
IoTによる予測メンテナンスのすごさ

末岡洋子
【第134回】 2016年11月4日
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 あわせて、予測メンテナンスがもたらす従業員の働き方改革にも期待している。「メンテナンススタッフはより能動的に仕事ができるようになる。スタッフがハッピーなら会社の業績も上がる」とMorgente氏は述べる。現場で点検に当たるスタッフにはタブレットを支給し、ドキュメント、写真、フィードバックなどを効果的に共有することも始めている。

 このシステムを支えるSAPにとっては、格好のショーケースとなる。この日は記者、パートナー、顧客など100人弱を世界から集め、ローマからFrecciarossa 1000でナポリ近郊のピエトラルサに向かい、実際のDMMSを見せた。会場となったのは、歴代の電車が展示されているピエトラルサ鉄道博物館だ。

 SAPでIoT担当エグゼクティブシニアバイスプレジデントのTanja Rueckert氏は、「ITとOTの融合」とプロジェクトの意義を形容した。情報のITと装置や機器の運用のためのOT(Operational Technology)の融合は経営の課題とも言われるものだが、「ビックデータとIoTによりこの2つを結びつけることで、顧客に多大なメリットがある」と述べた。もちろんこれはインダストリー4.0につながる動きだ。駆けつけたCEOのBill McDermott氏は、「今後5年で20億ユーロをIoTに投じる」と発表した。

Uberなどの新サービスにより
激動期を迎える運輸業界

SAPのCEO Bill McDermott氏(右から3人目)、TreitaliaのCEO Barbara Morgante氏(右から2人目)、同技術ディレクターのMarcos Caposciutti氏(右)

 背景にあるのは、運輸業界に押し寄せるデジタル化がもたらす変化だ。「過去の乗用車の普及は大きな脅威だったが、現在台頭しているUber、BraBraCar(欧州のカーシェアリングサービス)などにより運輸業界は激動を迎える」とMorgante氏、長距離路線では他社の参入も見込まれている。

 生き残りのためには、効率性の見直し、優れたサービスの提供は必須だ。「信頼できる、快適、効率がよい――三拍子揃えば、顧客がTrenitaliaを選んでくれる」(Morgante氏)。同社はすでに家族、ビジネス、学生など用途に合わせた割引パックを揃え、電車に乗る前、降りた後をサポートするホテル、レンタカーなどとの連携も進めている。一部車内にWi-Fiを導入しており、チケットの購入ができるアプリも提供している。

 「われわれの顧客は列車を利用する顧客ではない。世界をベースとした運輸を利用する顧客だ」――親会社のGruppo Ferrovie dello Stato Italiane(国有鉄道)のCEO、Renato Mazzoncini氏は言う。これまである程度守られてきたビジネス環境が少しずつ競争にさらされており、手をこまねいてはいられない。同社が打ち出した今後10年のビジネスプランでは、デジタルによるトランスフォーメーションとエネルギー効率化が重要な柱だ。DMMSはその第一歩となる。

(取材・文・撮影/末岡洋子)

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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