2014年のFIFAワールドカップで優勝したドイツ代表チーム、強化にあたってデータを駆使したことは有名な話だ。同チームを技術面で支援したドイツのソフトウェア企業SAPの支援を、今回横浜F・マリノスが受けることになった。マリノス側はオンザピッチでのパフォーマンス強化、オフザピッチではファンとの関係強化による来場者数増加などの課題を挙げている。

サッカークラブを
技術で支援できること

SAPでグローバルスポンサーシップを担当するバイスプレジデントのクリス・バートン氏(左)と、横浜Fマリノス社長の嘉悦 朗氏(右) Photo by Yoko Sueoka

 横浜FマリノスとSAPとの関係は、横浜マリノスを傘下にもつCity Football Group(CFG)が7月にSAPと締結したグローバルレベルのパートナーシップに基づくもの。CFGはマリノスのほか、Manchester City、New York City、Melbourne Cityの合計4クラブ・6チーム(Manchester CityとMelbourne Cityは女子チームも持つ)を持ち、6チームすべてがこの提携の対象となる。7月の英マンチェスターでの発表後、米ニューヨーク、豪メルボルンで提携について説明する会を持っており、今回4都市目としてマリノスのホームである日産スタジアムにて代表者が会見を行った。

 スポーツでSAPを有名にした“データを利用したパフォーマンス強化”が注目されるが、提携の目的は大きく3つ。CFGの運営システム、ファン関係管理、パフォーマンス強化だ。

 1つ目はビジネス面での運営支援で、CFGの業務システムでSAPのクラウドソフトウェアを利用する。製品としては人事・タレントマネジメントの「SuccessFactors」、ソーシャルプラットフォーム「SAP Jam」、財務「SAP Simple Finance」、ビジネスインテリジェンスの「SAP BusinessObjects」、それに予測分析「SAP Predictive Analytics」などだ。

 CFGのマーケティング部門でコマーシャルディレクターを担当するOmar Berrada(オマール・ベラーダ)氏は、「われわれには、複数のクラブを傘下に抱えるという独特の難しさがあり、同時に事業は拡大している」と運用面での課題を語る。これまでバラバラだったシステムをSAP技術で標準化することで業務の効率化、シンプル化、長期的にはコスト削減などを期待しているという。

伸び悩む来場者数を増やせるか

 2つ目は「ファンエンゲージメント」だ。

 試合を見に来てもらうという取り組みは、種目と地域を超えた世界共通の課題だ。今回の提携でも最も大きな部分となり、横浜Fマリノスの代表取締役社長、嘉悦朗氏も大きな期待を寄せる。「6年前に着任以来、来場者数増加に取り組んできた。この間、約25%増加したが、ここ1年ほどは壁にぶち当たっている」と嘉悦氏。打開策の1つと考えるのが「ファンのプロフィールにあった情報発信」。ここでSAPが技術とノウハウを提供する。

 SAPのグローバルスポンサーシップ担当バイスプレジデント、Chris Burton(クリス・バートン)氏は、「われわれが提携しているNBA(National Basketball Association)の調査では、ファンのうち実際に試合に足を運ぶのはわずか2%だった。スタジアム以外でも試合を楽しんでもらうこと、試合に来てもらうことが大切」と述べ、ここでの経験やノウハウをCFGでも生かしていきたいとした。