説明会には多くの人が集まり、成功を収めた。しかし、その後のミーティングの席でちょっとした出来事があった。

「全農の方から『我々はどういう立場をとればいいんですか?』と訊ねられました。直販は農家にとって魅力的ですが、市場を通さないため農協としてみれば利益を損ねる存在です。それぞれが違った立場にいる以上、こうしたことは起こりえます。我々が県庁だけの組織であれば『あんなことはしないでくれ』という話になったでしょうね。けれど、彼らもプロジェクトのメンバーとしてあり方を模索してくれている。同じステージにあげるというのはこういうことなんだな、と」

 あくまで目的は生産者が潤うこと。その目的を共有し、調整を続けていくことが、プロジェクトをうまく進めるための第一歩。

「半年経って感じたことはこの四者がいいところを発揮できれば、生産者にとって有意義なんじゃないか、ということです。今までは各団体の手続き立場で難しかったところが、販売もできるし、ネタやアイディアも持ってこられる。それに各々が資金も出せるという形になれば強いと思いますよ」

自治体に不足しがちな
「市場に合わせる」発想

徳島名産のすだち(左)。日本酒に絞ってもおいしい。菌床しいたけは生産量、日本一。写真は軸が太い品種であっさりした旨味

 徳島県の食材は意外と知られていない。おそらく全国でも十本の指に入るほど地味な県ではないだろうか。ただ、わかめや菌床しいたけ、すだち、カリフラワー、地鶏では阿波尾鶏などが日本一の生産量を誇るし、他にハモや養殖鮎、鳴門金時、春先のにんじんなど食材は豊富だ。

「PRについてはこれまでは大消費地である大阪で売れればよかったという点で危機感が薄かった部分があります。例えば徳島のスダチは有名で、生産量も全国一です。その話をすると「うちでもサンマにはかけてるよ、かぼす!」と言われたり。かぼすは大分ですけど……みたいな(笑)まだまだこれからです」

鳴門金時というさつまいもも有名だ。主に関西圏で消費される

 徳島は森林が八割を占める狭い県。したがって大規模な商材が生まれづらく、大きい取引を求めても他県には太刀打ちできない。また安さを競っても運賃の関係があるので首都圏では不利だ。

「そうしたハンディキャップは永遠に埋まりませんから、安さよりも価値を共有できる方とコミュニケーションをとっていく必要があります。販路の確保の他に産地の拡大も重要です。決めているのは生産者に対して“出口のない提案をしない”ということ。今までの県は“できたものを売る”という形だった。そうではなくこういったものはないか、という市場の要望を汲みとっていくことが大事です」