泣き崩れるヒラリー支持者の女性

 ヒラリーより8歳下のダンガンは、1970年代に米空軍に入隊し、どの部隊に配属されても女性は自分1人だけ、という状況に直面した。

「女性だという理由で、様々な差別も受けてきた。だから、政治という男性中心の世界で差別をくぐり抜けてきたヒラリーには、何としてもこの国初の女性大統領になってほしかった」

 ミシガン、ウィスコンシンの他にニューハンプシャーなど大接戦の数州の開票結果が出る前に、クリントンがトランプに電話をかけて負けを認めたことも、ヒラリー陣営のボランティアたちを混乱させ、阿鼻叫喚に陥れていた。

 呆然とした表情で、ハイヒールを脱ぎ、裸足で泣きながらホテルの宴会場から走り去る若い女性。壁にもたれて肩をふるわせ、人目もはばからず号泣する男性。

「これ、何かのジョークよね? トランプの勝利スピーチが終わったら、ヒラリーがミシガンとウィスコンシンを取って、実はヒラリーが勝者だったってオチよね? サタデー・ナイト・ライブのパロディみたいに」と叫ぶ大学生。

 多くの老若男女は、言葉なく立ち尽くし、または床に座り込み、トランプが壇上で笑う姿を呆然と見つめていた。

大激戦地ネバダでトランプ勝利は
どのように受け止められたか?

ラスベガスのトランプホテルで清掃係として働くカーメン。ヒラリーを支持しており、その胸には労働組合員であることを示すバッチが(写真左)。同じくトランプホテルで働くエレウテリア(写真右)

 ここで、大激戦地ネバダ州の投票日当日を振り返ってみよう。

 ラスベガスの「ストリップ」と呼ばれるカジノが密集した地域の外れに、トランプ所有のホテル「トランプ・インターナショナル・ラスベガス」がそびえている。

 64階建ての金色の建物。シャンデリアが輝くロビーに入ると売店があり、そこには「Make America Great Again」というスローガンが縫い込まれた帽子が並んでいる。ロビーには、白人、アジア系、黒人といった様々なお客が行き交う。車寄せに停めてあるネバダ州ライセンスのついたジープには、「TRUMP」と大きくロゴが描かれた青い旗が2本立てられ、巨大なトランプの写真ボードが立てかけられていた。

「まだ昼間で酒も飲んでないのに、今日は最高にウキウキするよ。これで今夜トランプが当選したら、もう一晩中パーティーしちゃうぞ!」

 車の持ち主の男性は、ホテルを訪れる観光客たちにそう語り、上機嫌でポーズを取り、写真を撮られていた。