デトロイトのGM本社。「Make America Great Again」は、『アメ車を買おう」ではない  Photo by Kenji Momota

 なかでも、トランプ次期大統領が選挙期間中に発言した、NAFTA (北米自由貿易協定)の見直しの可能性が焦点になっている。カナダではトヨタとホンダ、メキシコでは日産とマツダが北米向けの主要製造拠点を稼働させている。ただし、NAFTAの活用は日系のみならず、デトロイト3も近年、メキシコでの生産を強化しており、トランプ政権が日系メーカーのみを対象にするという異例措置を講ずるとは思えない。

 仮にNAFTA見直しによって、アメリカへの輸入関税アップや、完成車や部品としての総量規制がかかる場合、当然ながら自動車メーカー各社はカナダ・メキシコからアメリカ国内へ生産拠点をシフトする必要がある。資金力のある自動車メーカーにとっては、少々値が張る事業計画の変更の範疇かもしれない。

 だが、自動車メーカーを後追いする形でカナダ・メキシコに進出した部品メーカーにとっては多大なる損失となる。特にメキシコでは、日産がアグアスカリエンテスに20億米ドル(約2000億円)を投じて2013年に開設した新工場、及びその周辺のサプライヤーパークでは、投資の回収が難しくなる危険性がある。

 一方で、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関しては影響は少ない。なぜならば、そもそもTPPにおける自動車分野は、参加国全体での協議ではなく、日米の2国間協議だからだ。TPPにおける自動車分野は、アメリカにとって「他の分野への影響力を行使するための、手段のひとつ」であったに過ぎない。

 その点について、TPP交渉は原則非公開だが、筆者は以前、永田町の議員会館での政党関係者らと意見交換、また霞が関周辺との意見交換のなかで「交渉の雰囲気」を確認できた。そのうえで言えるのは、アメリカがTPP発効を拒否した場合でも、今後、TPPとは別枠での個別協議として、日本に対して自動車がらみで「なんらかの駆け引き」を仕掛けてくる可能性は残されている。

対米輸出は事実上なくなる?
日本の国内産業への影響は必至

 では、アメリカによる保護主義は、日系自動車産業にどのような影響を与えるのか?

 80年代、アメリカの労働者が日本車を斧でぶった切り火をつけた、あのような光景が再現するのか?