菅直人政権が内閣改造・党役員人事を行った。参院で問責決議が可決された仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通相の交代が第一の目的だったが、最も注目を集めているのは、与謝野馨氏の経財相起用だ。
与謝野氏は昨年4月に自民党を離党し、「たちあがれ日本」という新党に参加したが、自民党を除名された。比例で当選した議員が他党へ移籍することに対する処分だった。その与謝野氏が、今度は選挙時の反対勢力であった民主党政権入りする。これは前回指摘した、民主党と自民党の中堅議員の協力を中心にした「政界再編」の可能性を崩すものである(第1回を参照のこと)。今回は、与謝野氏の入閣が政局に与える影響を考える。
与謝野馨が考えていたこと
――「最後の一仕事」への布石
自民党で要職を歴任し、総裁候補でもあった与謝野氏が、民主党政権に加わったのは、自民党が解散総選挙による政権復帰を目指していることに失望したからだ。彼はおそらく、今回が衆院議員として最後の任期と考えている。高齢で、癌の手術を受けた上に、同じ選挙区のライバル・海江田万里氏が閣僚になり実力を着けてきた。
次の衆院選後に自民党が政権復帰しても、与謝野氏が選挙に勝つのも、次の任期を全うするのも難しい。与謝野氏が政治家として「最後の一仕事」をするのは今回の任期しかなく、民主党政権入りするしかなかったのだ。
与謝野氏が「たち上がれ日本」に参加したのは、いずれ民主党政権に加わるつもりだったのだろう。「たちあがれ日本」の結党は2010年4月で、鳩山由紀夫政権が「普天間基地移設問題」で支持率を急落させていた時だ。
与謝野氏は鳩山政権が早期退陣し、ポスト鳩山には財務省と密接な関係を構築しつつあった菅氏が浮上すると予想した。与謝野氏はいずれ登場する財務省寄りの菅政権と協力できると考えて、自民党を飛び出したのだ。