例えば、こんなケースがあったそうだ。ある日、社員が足の手術をして、ギブスをはめて出社した。通勤ラッシュの電車に乗って出勤するのはいかにもきつそうだったが、彼はその間、毎日始発の電車で通勤し、1日も休まなかった。それをずっと見ていた畑さんは、ギブスが外れた日、ねぎらいの意味も込めて彼にコインを渡した。

「ふだんはそんなに感情を露わにする人じゃなかったんですが、その時は本当に嬉しそうで、それを見た私まで嬉しくなりました」(畑さん)

ポイントは必ず「言葉」を添えて渡すこと

 コミュニケーションのきっかけになるという点では、ドクロも同じだという。「例えばこんなことがありました」と、MINIKURAチームのリーダー、柴田さんが話す。

「MINIKURAチームの中に、プロジェクトの進行スピードが遅いチームがありました。サブリーダーを務めていた社員は中途入社組だったため、最初の頃は、メンバーに遠慮してドクロコインを1枚も渡せなかったんです。それを見ていた私は、そのサブリーダーに2枚のドクロコインを渡しました。

 1枚はプロジェクトの進行スピードを上げるためにドクロコインをうまく活用できていないことへのダメ出しの意味で、もう1枚は、今後サブリーダーとして、ものごとにはっきりと○×を付けて、その上でチームメンバーに対して求心力をもってプロジェクトをすすめてほしいという期待を込めて渡しました」

執行役員・月森正憲さん。月森さん曰く、社内では、良い意味で、コインを巡る駆け引きもあるそうだ Photo by T.U.

 ドクロをもらった直後、サブリーダーはなぜ自分が2枚もドクロをもらわなければならないのかわからず驚いていた様子だったが、柴田さんの話を聞いて反省し、納得した上でドクロコインを受け取ったそうだ。

 ドクロの受け渡しに関しては、前回インタビューした執行役員の月森正憲さんからも、こんな証言を聞いていた。

「ある時、社長の中野に急に呼ばれた事がありました。すぐに『あの件だな』とピンと来ました。案の定、ドクロをもらいそうだったんで、先回りして『あの件でしたら、これこれこうで、こんな対策をとって、こういう方針で進めようと思っています』と説明したんです。そしたら、『いいじゃん、いいじゃん、やりなよ』となりまして。中野が手に持っていたドクロを引っ込めた。そういう駆け引きがあるのも、このコインのおもしろいところなんですよ」

じつは、人事泣かせのコイン

 再び、畑さんに質問をぶつける。

――コインのやりとりがきっかけでコミュニケーションが生まれ、職務に対する理解も深まっていく点はおもしろいですね。ところで、使う枚数は決まっているんですか?

「最初にゴールド何枚、シルバー何枚と決まったワンセットを渡しますが、全部を使い切らなくてもいいですし、足りなくなったら追加で出します」

――ということは、事実上、上限はなし?

「その通りですが、また人事泣かせな点でして」