黒板上に書かれた住宅価格は毎日のように上昇する

 振り返れば2014年9月、中国では主要70都市の新築住宅価格のうち、69都市で不動産価格が前月に比べ下落するという前代未聞の値崩れを経験した。日本のメディア(当コラムも含めて)が「住宅バブル崩壊か」と警鐘を鳴らしたことも記憶に新しい。その後、中国経済は失速し、最大の課題が「住宅の過剰在庫の処理」とまで言われるようになった。

 しかし、供給過剰に陥ったのは三級、四級といわれる地方都市の住宅だった。一級、二級都市では再び住宅購入が熱を帯びる。

 中国では、その購入熱は投機以上に“実需”だと解釈されており、上海在住の不動産投資家も「上海の住宅価格の上昇は常軌を逸している」としながら、「地方都市の富裕層が北京、上海に居を構えたいという願望はますます強まっている」と“止められない沿海部への流れ”を強調する。

来年から固定資産税が厳しくなる?
そんな噂も上海では誰もが無視

 だが、一方で、今年10月を過ぎると、過熱した市場が静観に転じた。「2017年から上海市では固定資産税の課税が厳しくなるのでは」という憶測が出たためだ。

 そもそも中国では、9割近い世帯が住宅を所有しながらも、固定資産税が本格導入されないまま市場ばかりが肥大化した。住宅の購入と売却における税金はあっても、「保有」に関わる税金がないのである。同様に相続税と贈与税も、法令がありながらも課税に踏み切っていない。そのため、富める者は永遠に富むという歪んだ社会構造のもとで「富の再分配」がまったく行われないまま今日に至っている。

 もちろん、中国でも多くの専門家が固定資産税の導入をめぐって議論を闘わせてきており、「住宅バブル抑制に最も効果的なのが固定資産税の導入だ」という認識も存在した。そこで、住宅バブルが猛威を振るった2011年、その勢いを鎮静化させようと上海市と重慶市の2都市において固定資産税の実験導入が始まった、というのがその経緯である。

 言うまでもなく、その動向は大きな注目を集めた。

 ところがその後5年経った今、上海市において固定資産税はほとんど課税されていない。筆者は上海のいくつかの世帯にヒヤリングしたが、ある世帯は「少なくともうちは納めていない」という。また別の世帯も「親戚も納めていない。友人が納めているという話も聞いたことがない」という。

 調べてみると、これには根深い問題が潜在していることがわかった。そもそも上海市における「固定資産税の実験導入」には「納税しなくてもいい例外」というのがあまりに多すぎるのだ。