市場関係者にとってはうれしいサプライズだったに違いない。OPEC(石油輸出国機構)は11月30日の総会で、2008年12月以来の減産を決めた。12月1日の午前中、円の対ドルレートは1ドル=114円台となり、日経平均株価は前日比400円を超える上昇を見せた。

OPEC総会議長を務めたカタールのサダ・エネルギー産業相(左)らの記者会見。減産合意に市場は安堵した Photo:REUTERS/アフロ

 事前協議でサウジアラビアとイランの間に溝があることが報じられ、減産合意は難しいとの観測が流れていた。だが、OPECの総会では「サウジアラビアとしては、国営石油会社のサウジアラコムの上場を控え、OPECの結束を演出し、原油価格下落を防ぐ必要があった。減産合意はミッションだった」(新村直弘・マーケット・リスク・アドバイザリー代表)ようだ。それ故、イランなどに対して例外的な増産を認めたのである。

 今回、減産期間を17年1~6月の6カ月に限定し、夏の需要期の前までとしたところに、原油価格急上昇は回避したいサウジの思惑がある。1バレル=60ドル近くになれば、米国がシェールガスを増産するのは確実だからだ。トランプ政権が誕生すれば、規制緩和により、シェールガス採掘がしやすくなるともいわれる。

 他方、生産設備への投資が遅れているイランは、せいぜい緩やかにしか増産できないとのサウジ側の見立てもあったようだ。