彼女の主張には、共感できる部分がある。たしかに、私たちはセックスのため(だけ)に、恋人と付き合うわけではない。ましてや、結婚して、子どもを産んで、家庭を守って……といったライフコースだけがすべてではなく、人生は自らの意思で舵をとる航海のようなものであるべきだ。その人生という舞台で、一緒に切磋琢磨して汗を流す相手を「相方」と呼ぶのは、むしろ適切な表現のように思える。同じ舞台に立つ、お笑いコンビのように。

 一方で、「彼氏、彼女」よりも高次元な関係を「相方」と呼んでいるとするならば、反発は免れない。実際にこの知人女性は、友人から「彼氏のことを相方って呼ぶのは変だし、ちょっと鼻につく感じがあるよ」と指摘されて以来、相方という呼び方を止めたのだという。

『逃げ恥』が流行した理由も「相方」にアリ?

 しかし、筆者が察するところでは、恋人や配偶者を相方と呼ぶ心理の背景には、「高次元の関係」をアピールする目的というよりは、「気恥ずかしさ」が先立ってあるのだと思う。

 昨今では、交際経験や性経験がない若者が増えていると指摘されている。国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回出生動向基本調査(独身者調査)」によると、男性の69.8%、女性の59.1%が、交際相手がいないと答えている(18~34歳までが調査対象)。

 もはや、恋人がいるのが少数派である時代。恋愛は若者のなかで流行っておらず、時代遅れのものになっているのかもしれない。そんななか、既存の恋愛観が染みついた「彼氏、彼女」という言葉を使うことに、気恥ずかしさや抵抗感を覚える人がいてもおかしくない。

 さらに、同調査によると、男性の30.2%、女性の25.9%が、「とくに異性との交際を望んでいない」と回答している一方で、9割近い男女が「いずれは結婚するつもり」とも考えている。つまり、人生の相方と結ばれるためには、必ずしもロマンスが必要というわけではないのだ。さらに言ってしまえば、別に恋愛を経ずとも結婚はできるということになる。

 新垣結衣と星野源が好演し、大きな話題となっている『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)は、契約結婚が題材のドラマだ。二人は恋人や夫婦である以前に、価値観や思想があう相方であり、ロマンスをその後のプラスα、付加価値として経験する姿が描かれている。

 考えてみれば、かつて盛んだった「お見合い結婚」だって、同じことだったのではないか。見知らぬもの同士が結婚し、その後に愛を育んでいく。お見合いの場合、二人を結びつけるものが家や地縁といったものだったのが、現在では価値観や思想に変わっただけである。