安全をウリにすれば中国でも売れるはず。そう踏んだ渡辺社長はまず、自社製品を防腐剤フリーにした。しかし、製品が「良い」だけで売れるほど、中国市場は単純ではない。中国市場への進出コンサルティングを手がける中国市場戦略研究所代表の徐向東氏から教えられたのは、「まず日本で売ること(中国人は日本で売れている商品を買いたい)」、そして「広告ではなく、中国人が好む口コミを広げる戦略をとること」だった。

高い広告費はムダ
口コミを広げる仕掛けとは

 日本と中国の両方で売るのは、実はなかなか難しい。消費者の購買行動が大きく違うからだ。パッケージデザインひとつとっても、日本人と中国人では好みが異なる。

オールインワンシートマスクモイスト

 当初からある「オールインワンシートマスクモイスト」(写真右)は日本人向けのみでスタートしたもの。一方、今年3月に発売した「クイーンズプレミアムマスク」(写真下)は日中両国を意識したため、デザインは大きく異なる。「双方の国の女性から意見を聞きながらデザインを決めるのは、思いのほか苦労しました」(渡辺氏)。

 また、日本人はネットでの個人の口コミは「ステマ」と疑って嫌う一方、「アットコスメ」などの大手口コミサイトは信用する傾向にある。

クイーンズプレミアムマスク

 一方、中国人が信用するのは、“カリスマ読者モデル”のような女性たち(インフルエンサー)がSNSやブログで発信する情報、そしてリアルの友人たちの「良かった!」という声だ。また、広告は往々にして費用対効果に乏しい。爆買いを期待する日本企業が広告に殺到した結果、飛行機の機内誌広告などの相場がつり上がったが、肝心の中国人たちは広告にはあまり反応しないのだ。

 渡辺氏はまず日本で売るために、自社商品を懸賞サイトなどで大量にプレゼントし、口コミサイトでのレビュー増加を狙った。価格と品質には自信があったからだ。「これでもか、というほど配りました」という効果が出て、アットコスメのシートマスク部門でナンバーワンを獲得。この“力技”で、まずは条件その1の「日本で売れている商品」をクリアした。

 中国市場をクリアするために見据えたのは、「代購」(日本製品を中国のECサイトで売る事業者たち)、そして中国全土にいるカリスマインフルエンサーたちだ。