7月20日、日本政府観光局(JNTO)から、2016年6月の訪日外客数(推計値)が発表された。気になるのは、最も日本の観光消費に貢献すると言われている中国人訪日客の伸びだが、今年6月は58万人が来日し、前年比26%増となった。2015年6月に見たような、「前年比167%増」という驚異の伸びこそ示さなかったが、来日数は依然伸び続けている。
その一方で、2015年に見られた爆買い騒ぎは沈静化している。為替が円高に振れた今では、日本から商品を買いあさって中国で転売する“転バイヤー”も鳴りを潜めた。一言でいえば、「爆買いバブル」は円安と転売がもたらしたものだったと言える。
さて、バブルの泡が消えつつある中で見えてきたのは、インバウンドビジネスにおける勝ち負けの差だ。その勝敗は、銀座の街にもくっきりと表れた。
インバウンドを追い風に頭角を現したのが、家電量販店のラオックスだ。ラオックスには1960年代から他の小売店に先駆けて免税ビジネスを手掛けてきた実績がある一方で、2009年の蘇寧電器との業務資本提携を経て、秋葉原の店舗を中国人客専門店に改装するなど、ここに特化した売り場づくりに力を入れてきた。
「ラオックス銀座本店」といえば、ここをめがけて観光バスが集まってくるその人気ぶりからも、中国人客にとって不可欠の存在であることがうかがえる。業界内では「ツアーガイドが客を連れてくる」という噂もあるが、「そうした事実はない」(同社広報)。ひとえに「メイドインジャパンの品ぞろえやサービスにこだわった店舗運営」(同)が実を結んだようだ。
確かにその商品カテゴリーは高級パールネックレスも生理用品もあるといった具合に、実に多岐にわたる構成だ。通常、異なるカテゴリーのものを仕入れるのは、「ルート確保だけでも大変な作業ともいわれ、同業者はここへの参入をためらう」(インバウンドに詳しいコンサルタント)といわれている。それだけに、この究極の「ワンストップ・ショッピング」の構築は一見の価値がある。
一方、ラオックス銀座本店からそう離れていない新橋駅前に、昨年4月、ヤマダ電機が免税店「LABIアメニティ&TAXFREE」を開店させた。既存のヤマダ電機LABI新橋生活館が外国人客向けに業態チェンジを図ったのである。
ところが1年を過ぎた今、すでにこの免税店は姿を消し、パソコン・デジタル関連の専門店「ツクモデジタルライフ館」に変身していた。界隈には中国人客を狙った免税店がいくつかあるが、同じ商圏内の立地でも集客には濃淡があるようだ。