都内でWEB制作会社を経営する女性。仕事の合間に必ずチェックするインターネットのサイトがある。「クーポン共同購入サイト」。レストランやエステ、ホテルなどのクーポンが、50%から90%といった割引価格で購入できる激安サイトだ。この日、彼女の目に留まったのは、高級黒毛和牛のすき焼きコース。通常価格4500円が、50%引きの2250円で売りに出されていた。早速購入ボタンを押す。予定数はすぐに完売し、取引は成立した。
「お店がどんな雰囲気なのか、お料理も含めてすごく楽しみです」
いま、クーポン共同購入サイトが急速に広まっている。その一方で、トラブルも起きている。正月に発覚した、いわゆる「スカスカおせち問題」。サイトに載っていた写真と届いた実物が全く違うと苦情が相次いだ。追跡チームが取材を進めると、他にも様々な問題が発生していることがわかった。
高級グルメ、エステも半額以下。
激安の秘密を探れ!
「クーポン共同購入サイト」とはどんな仕組みなのか。追跡チームは、業界大手のサイト運営会社を訪ねた。
「だいたい1日で100件ぐらい、チケットの扱いをしています」
クーポン共同購入サイトは、サイトの運営会社とそこに出品を希望する店。そして、消費者の3者で成り立っている。消費者は店が出品した商品のクーポンを購入。運営会社に代金を支払う。運営会社はそこから20%から50%の手数料を受け取り、残りの金額を店に渡す。そして消費者はクーポンと引き換えに商品やサービスを受けられる仕組みだ。
正午。この日新たに登録された商品が一斉に売り出された。申し込みの制限時間は通常24時間。サイト運営会社の編集長は、その訳を次のように述べた。
「時間を区切ることで、カスタマーの立場でみたら何とかこの瞬間に買わなければならないという気持ちが当然生まれることを狙っています」
さらに、取引が成立するには、申込みが予め設定された販売数に達しなければならない。そのため申し込んだ客は、何とか取引を成立させたいと、メールやツイッターなどを使って友人や知人に購入を勧める。客自らが宣伝役となることでコストをかけず、より多くの商品を確実に売ることができるのだという。取材している間にも、客からの申し込みが次々と入り、完売する商品が続出していった。
「ビジネスの特性として、人数が集まらないと購入できる権利が発生しないんです。なので、1人でも多くの人に声をかけたくなるというのは、当然、心理としてはあるでしょう」
赤字覚悟で集客。
店舗側のメリットは?
では、激安クーポンを販売する店側にはどんなメリットがあるのか。都内に3ヵ月前に開店したカフェ。この日、サイトの運営会社と出品について打ち合わせを行なっていた。運営会社が提案したのは、看板商品のアイスクリームを半額以下の200円で販売するプラン。発行枚数は店の規模を考え700枚。その場合の店の収支。アイスクリームの原価は180円なので利益は20円。運営会社に1枚当たり80円の手数料を支払うので、差し引き60円の赤字。700枚販売すると合計で4万2000円の赤字が発生することになる。