全国で群を抜く生活保護受給者を抱える大阪市西成区。月初の「支給日の朝」に区役所を訪れ、我先に現金を手にしようと役所になだれ込む受給者と、周辺でたむろするヤミ金や貧困ビジネス事業者たち、そして山積する問題を前になすすべを持たない行政関係者などに話を聞いてみた。(文・撮影/フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
生活保護支給日は
ヤミ金への返済日
「こら~。われ、何、写真撮っとるんじゃ~。商売の邪魔すな!どき晒せ!死ね!!」
生活保護受給率全国1位の大阪市――そのなかでもいわゆる「あいりん地区」を擁する大阪市西成区は、生活保護受給世帯2万4516世帯、同受給者数2万6806人を抱える。実に1000人中240.3人が受給者(いずれも大阪市HPから)という、大阪市のなかでも群を抜く生活保護者数だ。
その大阪市西成区役所では、毎月月初ともなれば区役所の周りをぐるり囲むような人だかりができる。この日は、生活保護受給者たちが「給料日」と呼ぶ生活保護費の支給日だ。
銀行振込ではなく「手渡し」での支給を選択している受給者たちが、少しでも早く「給料(生活保護費)」を手にしようと、早朝から区役所にやってくる。
区役所の業務開始と共に、受給者たちは我先にと受給会場となっている区役所4階を目指す。階段で駆け上る者もいれば、朝11時まで「(受給会場である4階まで)直通」運行されているエレベーターを目指し走る者もいる。
エレベーターホールでは、首から職員証をぶら下げた市職員たちの「気をつけてください!4階まで行きます」という大声が響く。この一連の流れを「ゲート・イン」(大阪市職員)と呼ぶのだという。
かつては、このゲート・イン中の受給者を敷地外から撮影しても、誰も何も言うことはなかった。
しかし今回は少し様子が違っていた。それが冒頭部の言葉だ。この言葉の主は、ひとしきり記者に怒声を浴びせると、区役所横に連なって路上駐車している車のなかへと消えた。
「お兄ちゃん、あれ、借金取りやな。トイチかトニでカネ貸す連中や」