最後まで大モメした「カジノ法案」。しかし、この法案の真意が国民に正確に伝わっているとは思えない。マスコミが過激な言葉を使って世論を誘導したことによって、日本人は「既にあるギャンブル問題」を直視しないまま、歪んだ世論形成が行われてしまった。(ノンフィクションライター 窪田順生)
「カジノ法案」が通っても
当面カジノは作れない
「カジノ法案」だなんて、世の中にギャンブル依存症の人たちが溢れかえって治安も悪化してしまう、と怒りに震えている方も多いかもしれないが、そこは安心していただきたい。
この法案が通ったところで当分、この国で「カジノ」をつくることなどできないからだ。
今回の法案を提出した国際観光議員連盟で事務局長をつとめる岩屋毅衆議院議員は著書『「カジノ法」の真意 「IR」が観光立国と地方創生を推進する』(KADOKAWA)のなかで、以下のように述べている。
《「IR推進法」が成立すれば、次はその具体的な内容を定めた「IR実施法案」が国会で審議され、IRをつくっていくための詳細な手順とルールを定めていきます。こうした2段階の手続きを取りながら、慎重に進めていこうとしているのがこの法案なのです。そのため、実際にカジノを含むIRが建設されるのはまだまだ先の話になります。おそらく、2020年の東京オリンピック・パラリンピックには間に合わないでしょう》(P5)
「え、そうなの?」と拍子抜けする方も多いことだろう。「ギャンブル依存症対策などまったく議論されてないのになぜそんなに成立を急ぐんだ!」と野党議員がマスコミに怒りのコメントを提供しているが、今回成立した法案は、実はそのあたりの具体的な議論を「推進」していくための、いわゆる「プログラム法案」というやつだ。
ちなみに、このような「推進」は民主党政権でもおこなわれていた。ネット上で「またブーメンラン芸をやらかした」と多くの方に指摘されているように、蓮舫代表が当時は行政改革担当大臣をつとめており、「早期実現の成長戦略」として「カジノ」の文言がある。
この当時も現在も、論じられているのは「カジノ」ではなく、ホテル、国際会議場、展示場、そしてシアターやショッピングモールなどのエンターテインメントを揃え、カジノフロアは全施設面積の3%程度という、シンガポールのマリーナベイサンズのような観光の目玉となる施設を推進していきましょうという話なのだ。