ベストセラー『明治維新という過ち』が話題の原田伊織氏は、これまで「明治維新とは民族としての過ちではなかったか」と問いかけてきた。
江戸という時代は、明治近代政権によって「全否定」された。
私たちは学校の教科書で、「明治の文明開化により日本の近代化が始まった」と教えられてきたが、本当になのか?
そして、今回さらに踏み込み、「2020年東京オリンピック以降のグランドデザインは江戸にある」と断言する。
『三流の維新 一流の江戸――「官賊」薩長も知らなかった驚きの「江戸システム」』が本日読売新聞に掲載された著者に、「明治維新と大東亜戦争の連続性」を語ってもらおう。
GHQとは何か
作家。クリエイティブ・プロデューサー。JADMA(日本通信販売協会)設立に参加したマーケティングの専門家でもある。株式会社Jプロジェクト代表取締役。1946(昭和21)年、京都生まれ。近江・浅井領内佐和山城下で幼少期を過ごし、彦根藩藩校弘道館の流れをくむ高校を経て大阪外国語大学卒。主な著書に『明治維新という過ち〈改訂増補版〉』『官賊と幕臣たち』『原田伊織の晴耕雨読な日々』『夏が逝く瞬間〈新装版〉』(以上、毎日ワンズ)、『大西郷という虚像』(悟空出版)など
そもそもGHQとは、日本が受諾したポツダム宣言を執行するために設置された連合国の機関である。
では、無条件降伏した日本を管理する最高意思決定機関はどこか。それは「極東委員会」である。
「極東委員会」は、アメリカ、イギリス、ソビエト連邦、中華民国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、オランダ、イギリス領インド、アメリカ領フィリピンの十一ヵ国で構成された。後に、ビルマ(今のミャンマー)とパキスタンが加わり、十三ヵ国となった。
この時点で、インドはイギリス領、フィリピンはアメリカ領の、共に隷属国家として参加していることを知っておく必要があるだろう。
この極東委員会とGHQの関係は、極東委員会が決定した対日占領政策を実際に執行する機関がGHQであるという、いわば上下の関係にある。組織である以上、明確に上下が存在しなければおかしい。
ところが、これは単なる「形式」であって、実際にはGHQが極東委員会に従ったことはまずない。
このことは、極東委員会の顔ぶれをみるだけで理解できるだろう。
実質的に日本の占領をすべて執行したのは、GHQであった。その最高責任者がアメリカ陸軍のダグラス・マッカーサー元帥であったことは、如何(いか)に平成日本とはいえ若年層でも名前ぐらいは知っているだろう。
歴史という時間軸の上では、つい数日前の出来事である。
マッカーサーは、昭和二十(1945)年八月十四日に連合国軍最高司令官(SCAP)に就任し、日本の占領施策を全面的に指揮したのである。
これも平時の感覚からすればおかしな話で、極東委員会の下部組織であるはずのGHQのボスは、連合国軍最高司令官であったのだ。
現に、マッカーサーの前任者は誰であったかといえば、「史上最大の作戦」としてお馴染みの「ノルマンディー上陸作戦」を指揮した、かのアイゼンハワーである。
結局、戦争とは「勝てば官軍」であって、どんな組織で誰に何をやらせるかといった事柄も勝者の理屈と事情で行われるものなのだ。
勿論、このような米軍による日本占領下で行われた事柄も、私にとっては検証の対象であることはいうまでもない。
かくして、敗戦後の日本を統治したのは実質的に米軍であり、統治の最高権力者はマッカーサーであった。
奇妙なことに、日本人自身に日本が敗戦によって独立を失い、米軍に占領されていたという意識がほとんど存在しない。
若者の中には、その事実を全く知らない者すら珍しくない。このことが、占領軍教育の成果であるといってもいいだろう。
敗戦を「終戦」などという言葉に置き換えて事実を正視せず、占領軍を「進駐軍」などといって刺激を和(やわ)らげようとするなど、占領された日本側も米軍に媚(こ)びへつらったのである。